上司が必死に指導するほど「部下は言うことを聞かない」科学的な理由とは? 職場で絶対口にしてはいけないアドバイスまとめ

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「君のためを思って…」そんな気持ちでアドバイスしたのに、相手に全く想いが届かないどころか迷惑そうな顔をされたといった苦い経験はありませんか。それ、相手にとっては「クソバイス」だったのかもしれません。今回のメルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』では“ブラック企業アナリスト”新田龍氏が伝授する、職場で絶対口にしてはいけないアドバイスをご紹介します。部下が言うことを聞かない科学的な理由とは?

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「説教する脳」はドーパミンを分泌している

人はなぜ、説教やアドバイスをしたがるのか。それは「気持ちがいい」からだ。

米ハーバード大学社会的認知・情動神経科学研究所の研究チームが発表した論文によると、自分の感情や考えなどを他者に伝える「自己開示」によって、脳内では快楽物質ドーパミンに関連する領域が反応を起こしているのだという。ドーパミンは報酬への期待や満足感に関係する化学物質だ。すなわち、人は自分のことを話すとき、脳は食事や性行為で得られる満足感と同じような快楽を感じているのだそうだ。

また、アドバイスは精神的な快楽のみならず、自己肯定感も高めてくれる効果がある。誰かに「教える」という行為は、その瞬間、教えている相手よりも自分が優位な立場におり、能力的にも優れているという確信を与えてくれる。

また、アドバイスを通じて自分が誰かの役に立てている、価値発揮できているという承認欲求も満たされる。これほど手軽に精神的な充足感を得られる手段は他になかなかない。道理で、愚にもつかない無益なアドバイスが世の中に溢れているわけである。

今や世界の常識、「教え魔」の弊害とは?

「頼んでもいないのに、相手に配慮した風を装い、一方的に『余計なお世話』のようなアドバイスをする行為や人」のことを、世の中では「教え魔」とか「クソバイス」などと呼び、強く忌避されている。さらには、主に男性が、相手を無知と決めつけて何かを解説したり、知識をひけらかしたりすることを指す「マンスプレイニング(Mansplaining)」という言葉さえ存在する。

実際、クソバイスについて論じた書籍も存在するし、スポーツジムやゴルフ練習場、ボウリング場などで「教え魔に注意」といった喚起がなされている旨が報道されたこともあった。マンスプレイニングは比較的新しい用語だが、2010年にはニューヨークの「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、2018年には辞書最大手のオックスフォード英語辞典にも掲載されている。迷惑なアドバイザーの存在は世界共通のようだ。

いずれも、教える側は善意で近づき、良かれと思ってやっているのかもしれないが、教えられるほうは邪魔なうえに断りづらい。周囲から迷惑がられていることに気づけないまま繰り返してしまえば、さらに信頼を無くしてしまうことになる悪循環だ。

痛々しい上司にならないためのポイント

そんな痛々しい、空虚なアドバイザーにならないために留意しておくべきことがある。それは、「アドバイスは相手が求めたときだけにする」ことと、「『昔話』と『自慢話』は封印する」ことだ。

米国メジャーリーグには、「教えないコーチが名コーチ」という格言がある。最初から教えすぎてしまうと、選手自身の問題意識や、自らが考えようとする力を奪ってしまうとの思想に基づくものだ。実際にメジャーリーグのコーチは、コーチの側から選手に近づいていってあれこれ技術指導をすることはなく、逆に選手が疑問を持って聞きに行くと徹底的にアドバイスするのだという。

相手から求められてもいないのに、自らの充足感や承認欲求を満たすために一方的に助言しようとするのは、アドバイスではなく単なる「説教の押し売り」であり、到底相手のためになっているとはいえない。逆の立場で考えれば、あなたが唐突に上司や先輩などから「こうすべきだ」などと言われたら困惑するだろうし、たとえそれが真っ当な意見だとしても、何となく煩わしく感じ、距離を置こうと感じてしまうかもしれない。一方で、仕事で行き詰まっているときに助言を求め、懇切丁寧にアドバイスを得られたなら、その相手に対して感謝や信頼さえすることだろう。

あくまで大前提は、アドバイスは相手が必要とし、求められ、積極的に聞きたいという姿勢になったときだけにおこなうことだ。そうすれば具体的なアクションにも繋がり、良い結果が導き出されることにもなるはずだ。

「昔話」と「自慢話」も同様。やっていいのはそのテーマの話題を求められたときだけであり、自分から語り出すことほど痛々しいものはない。あたかも、現在の自分には他者から尊重も承認もされていないため、せめて過去の栄光だけでも認めてほしい、というあがきのようにも見えてしまう。

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