テラハ問題で木村花さん母が提訴、フジテレビの「犯罪」はなぜ揉み消されたのか?傲慢ヤラセ体質に批判殺到

2022.12.07
by たいらひとし
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2020年に自殺したプロレスラー木村花さんの母親の響子さんが6日、花さんの死因を作った恋愛リアリティ番組「テラスハウス」を制作したフジテレビや制作会社を相手取り、約1億4200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。響子さんは、花さんが亡くなってから、花さんの名誉回復のための活動を続けており、SNSで誹謗中傷を行った加害者をめぐる訴訟や、誹謗中傷を根絶する活動に尽力してきた。花さんが亡くなった当初から現在まで、フジテレビの制作姿勢に多くの批判が集まっている。

問題になった「テラハ」は、フジテレビの“お家芸”番組

「テラスハウス」通称「テラハ」は、2012年からスタートした「台本なし」を謳う、シェアハウスに同居する男女7人の恋をめぐる「恋愛リアリティショー」。

ラブワゴンに乗って旅する男女の恋愛模様を描いた「あいのり」の系譜に位置する、いわばフジテレビの「お家芸」的番組だ。

花さんが出演していた「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」は、NetflixやFODでも先行配信され、YouTubeの専門チャンネルでも番宣のための追加映像が配信されていた。

問題となったのは、花さんのリングコスチュームを同居人の小林快さんが誤って乾燥機にかけてしまったこと。これに激怒した花さんが、快さんの被っていたキャップをはたき、その後、同居人のいる前で、同じく同居人ビビさんの制止も聞かず快さんを罵った態度が、ネットによる「炎上騒ぎ」のきっかけとなった。

後日、快さんは「週刊文春」の取材で、花さんが激怒したのも制作側からの指示だったと聞かされ、和解したと語っている。

スタッフからは「ビンタしろ」とまで言われていた花さんだが、さすがにそこまではできなかったという。

同誌の取材の中で快さんは「番組のやらせは常態化していた」と告白。

快さんもスタッフ側から花さんが嫌がるセクハラ行為を強要され、指示にしたがっていたとしている。

そして「SNSでの炎上を狙っていた」と、ヤラセの実態を証言している。

母・響子さんも花さんから「プロレスラーらしくふるまえ」「1のことを100にして盛り上げて欲しい」と指示を受けたと聞いていたという。

今回の提訴に際した発表で、当時、フジテレビ側は花さんや出演者に対して、スケジュールや演出などについて「全て指示・決定に従い、もし違反した場合は高額の賠償金を支払う」という誓約書にサインすることが求められていたとしている。

番組が「台本なし」をウリにしていることから、視聴者には出演者の行為は全て出演者の本心ととられ、批判の対象になりやすかった。

さらに、花さんの「コスチューム事件」は、3回に渡ってYouTubeで追加動画が配信され、番組側が「炎上」を煽っていたことも分かっている。

心を病んだ花さんを放置したフジテレビの「犯罪」

20年3月、Netflixで花さんが快さんを罵倒する場面が配信されると、SNS上で誹謗中傷が殺到。

その時点で、フジテレビは放送を中止し、花さんに対して精神的ケアを行っていれば、痛ましい死は防げたのかもしれない。

しかし、21年3月のBPO(放送倫理・番組向上機構)の報告書によると、フジ側は電話とLINEで花さんとやりとりをしたのみ。

実は、花さんが「テラハ」に出演する以前から、イギリス、フランス、韓国などの海外リアリティショーでも、出演者に対する誹謗中傷事件が起こり、出演者の自死事例が相次いでいた。その事実を知りながら何の対処もしないまま、煽り動画を配信した上、地上波でも同じ映像を流し続けたフジテレビ。

その結果、さらに誹謗中傷の炎が燃え広がり、最悪の結果をもたらしてしまった。

こうした検証がされているにも関わらず、BPO側の「テラハ事件」の見解は、「放送倫理上の問題があった」と認定しながら「人権侵害があったとまでは断定できない」と結論づけた。

事実上、フジテレビの「犯罪」が揉み消されてしまった形となった。

これには、ネット上からも疑問の声が相次いでいる。今回の母・響子さんの提訴がフジの「犯罪」を白日の下に晒すことができるのか注目したい。

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