多くの人に感動と興奮を与えたサッカーワールドカップ。国を背負って戦う彼らは、どういった哲学を持っているのでしょうか。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、『岡ちゃん』の名称で国民に愛された、元サッカーW杯男子日本代表監督の岡田武史さんの勝負哲学を紹介しています。
勝敗を分けるのは「意識」
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会では、日本代表が16強入りし、多くの人々に感動を与えました。
本日は、W杯男子日本代表やコンサドーレ札幌、横浜F・マリノスの監督として日本のサッカー界をリード。いままたFC今治のオーナーとして、地方から新たなサッカーの姿を精力的に発信している岡田武史さんの「勝負哲学」をご紹介します。
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監督は試合に際してどの戦術をとるかを判断しなくてはいけない立場です。だけど答えはないわけです。とことん考えても答えは出ない。
結局頼るのは何か?勘なんです。大事なのはその勘を選択する勇気ですね。こんなことをしたらまたマスコミに叩かれるとか、そんなことを考えて下した判断はいい結果を招かない。
反対に、無心に近い状態でぽっと浮かんだ考えを選択すると、ものすごい確率で当たるんです。
選手時代もそうでした。無心で試合に臨んでいたら、一度も決めたことのない左足のミドルシュートが見事に決まった、といったことを僕は何度か経験しました。フローとかゾーンとかいわれますが、トップアスリートは皆それを知っているのではないでしょうか?
これはあくまで私見ですけど、僕の場合は本で学んだことも少なからず影響しているような気がします。読書好きでサッカー以外の本も結構読むのですが、読んだ本の一節が、サッカーの試合中に僕の意識の中で化学反応を起こし直感に繋がるのではないか、と。
勝敗についてメディアや評論家は決まって戦術論、システム論ばかり言います。もちろん、それも大事ですが、勝負を分けるのは8割、9割が私たちの意識ですよ。
「ミスしても大丈夫」とか「俺一人くらいいいだろう」とか、そういう選手が一人でもいたら試合に負けるんです。
2010年のW杯の前、日本代表選手は敵地での試合で一勝もしていませんでした。その時、僕は録画した試合の様子を編集して選手たちに見せました。
すると、一人の選手が大丈夫と楽観視して蹴るのに失敗したとか。すべてがそういうミスなんです。戦術、システムの問題は一つもない。僕はこういうことにうるさくて、「君らが手を抜いて運を掴み損ねて、W杯で負けたらどうするんだ」と常に檄を飛ばしました。
神は細部に宿るというのは、本当にそのとおりなんですね。
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