新しいメディアは当初はブルーオーシャンだったのに、時間が経つとレッドオーシャン化してくる。この流れを加速するのが、先ほどのメッセージです。つまり、「特別な才能などなくても、厳しいトレーニングなんかしなくても、今日から稼ぎ始められる!」です。
明らかにこのメッセージは参加者を増やす方向に機能するでしょう。それも、全方位にわたって(≒参加者を限定しない)呼びかける形になっています。
*ただしこのメッセージに応える人たちには偏りがあります。それについては後述します。
よって、このメッセージは「予言の自己成就」と逆の働きをしてしまいます。「予言の自己成就」とは、何かしらの予言がなされてしまうと、それに引っ張られる形で予言が実現してしまう、という現象のことですが、「誰でも簡単に稼げます」的メッセージは、それが広く伝わることでむしろ簡単には稼げない状況を引き起こしてしまうのです。
この点を持って、メッセージ発信者の欺瞞だと断罪するのは難しいでしょう。なぜなら、新しいメディアの黎明期からの参加者にとっては、まさにその場所はブルーオーシャンだったからです。「自分の体験」を率直に語れば、それは「誰でも簡単に稼げます」メッセージになってしまうのかもしれません。それはイノセントではあっても、evilとは言えないでしょう。
ただし、状況の変化を認識してなお、同様のメッセージを意図的に──つまり、そういう発信のほうが受けるから/PVが稼げるから/売れるから──発信しているなら、それは欺瞞であり、evilです。
特に状況がレッドオーシャンになってなお、そうした発信を行っているとしたら、evilの疑いは濃厚になってきます。そういう人には近づかない方がよいでしょう──(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2022年11月21日号より一部抜粋)
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