国民が政治に参加できないロシア
皆さんご存知のように、私は1990年から2018年までモスクワに住んでいました。私がモスクワにいる間、
- ゴルバチョフ → エリツィン → プーチン → メドベージェフ → またプーチン
と大統領が代わりました。ゴルバチョフは、「ソ連最初で最後の大統領」ですから、時代を感じます。ソ連は、いうまでもなく「共産党の一党独裁体制」です。国民は、事実上政治に参加できませんでした。
90年代の新生ロシアは、かなりハチャメチャでしたが、政党が乱立し、国民が政治に参加することができました。2000年、プーチンが大統領になり、徐々に報道の自由、政治の自由は無くなっていきました。
今のロシアの状況は、どうなのでしょうか?形式は、民主主義です。大統領選挙も下院選挙もあります。下院には、与党「統一ロシア」、野党「公正ロシア」「ロシア共産党」「ロシア自民党」などがいます。しかし、ロシアでは、野党といえども、プーチンを批判することはできないのです。批判するとつぶされますから。
議会に議席を持ち、プーチンに従順な野党を「システム内野党」といいます。一方、ナワリヌイのように、反プーチンで、議会に議席をもたせてもらえない勢力を、「システム外野党」といいます。ナワリヌイは刑務所にいて、同志はほとんど欧州に逃げました。
というわけで、ロシアには、言論の自由も政治の自由もありません。ロシアで今、SNSに反戦投稿すると捕まります。1回目は罰金ですみますが、2回目は懲役15年の実刑が課される可能性があります。
私は何がいいたいのか?ロシアでは、プーチンと側近たちは「フリーハンドだ」ということです。彼らは、司法を超越している。その結果、どういうことが起こるのでしょうか?2022年4月18日の「NewSPhere」から。
アナリストでロシアに詳しい元アメリカ国務省の特別顧問ポール・ゴーブル氏は、2019年時点でのロシアの貧困について紹介している。ロシア連邦統計局(Rosstat)によれば、屋内にトイレのない家やアパートで暮らすロシア人は3,500万人、お湯の出ない住宅に住む人は4,700万人で、家の中に水道がない人は2,900万人だった。厳しい冬の寒さにもかかわらず、自宅にセントラルヒーティングの設備がない人は2,200万人に上った。(ゴーフル氏のブログ『ウインドウ・オン・ユーラシア』)
実際、モスクワから少し外に出ると、19世紀そのままの光景が広がっていて、驚くことばかりでした。
その一方で、支配者層は、世界の王族も仰天する超豪華別荘を所有しています。
例:メドベージェフ元大統領の複数の別荘(YouTube)
- 別荘1:9分ごろから
- 別荘2:13分7秒ごろから
- 別荘3:19分ごろから
28年モスクワに住んだ結論は、「為政者にフリーハンドを与えると、為政者と取り巻きは汚職により、どこまでも繁栄していく。彼らに反比例して、国民は貧しくなっていく」でした。