中朝露の脅威に反応。日本の防衛力増強は海外でどう報じられたか

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12月16日に閣議決定されるや、国論を二分する事態を引き起こした安全保障関連3文書の改定。この歴史的な大転換は、海外ではどう受け止められているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、アメリカの外交専門誌に掲載された記事を翻訳し紹介するとともに、自国の政策が海外からどう評価されているかを認識する重要性を訴えています。

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外交専門誌フォーリンアフェアーズが論ずる日本

当然ですが、日本で話題になっている問題が、必ずしも世界で話題になっているわけではないです。

最近の日本の防衛力増強の問題について世界は注目しているのでしょうか?

岸田首相は防衛力の強化に向け、2027年度に防衛費と関連経費の合計を現在の国内総生産(GDP)比2%とする方針を示しました。また敵基地反撃能力を持つことも示唆しています。

12月16日、自民・公明両党はその防衛費増額の財源のための増税などを入れた税制改正大綱を決定しました。

これについて世界的な権威のある外交専門誌フォーリンアフェアーズが論じていますのでご紹介しましょう。

2022年12月23日「アジアの脅威の高まりは、東京に防衛のタブーを捨てさせるか?」、ジェニファー・リンド氏の寄稿です。

How Asia’s Rising Threats Convinced Tokyo to Abandon Its Defense Taboos

12月16日、日本は数十年にわたる軍事抑制政策の劇的な変更を承認し、「普通の」世界の大国となるための大きな一歩を踏み出した。

 

新しい国家安全保障戦略の下で、日本は軍事費を倍増させ、今後5年間で3,150億ドルを防衛予算に追加するだけではない。また、敵地への報復攻撃を可能にする新たな「カウンターストライク(敵基地攻撃)」能力を開発し、これまでの方針から大きく転換する。

 

これに対して、北京やその他の国の評論家は、日本は暗い過去の軍国主義に戻りつつあると非難するだろう。これは誤りである。

 

日本は責任ある地球市民であり、統治、開発、技術、芸術、文化において世界をリードしている。今回発表された変更にもかかわらず、日本の安全保障政策は引き続き日米同盟に軸足を置いている。

 

日本は、軍国主義に乗り出すどころか、地域の脅威の高まりに対して、大きなためらいの末に反応しているのである。

 

米国とそのパートナーから見れば、日本の新しい国家安全保障戦略は称賛に値する。巨大な経済・技術資源を持つ平和国家が、地域の安全保障への貢献度を高めようとしているのである。

 

日本の歴史的転換の背景には、アジアにおける新たな変化がある。中国は、通常兵器と核兵器の大幅な増強に取り組んでいる。中国の航空機や軍艦は、日本の領海や日本との間で係争中の島の周辺に頻繁に軍事侵攻している。

 

北朝鮮も脅威を増している。ミサイル発射実験のペースを上げ、2019年にはこれまでの最高だった26回から、今年は86回を実施した。日本の市民は、北朝鮮のミサイルが領空を通過する際、悲鳴のようなサイレンと避難を促すアナウンスを聞くことに慣れてきている。

 

ウクライナ戦争もまた、日本人の認識を変えた。世論は対ロシア制裁の取り組みを強く支持し、ウクライナの侵攻に対する防衛の成功は、起こりうる侵略に対する軍事的備えの必要性のメッセージを強く印象づけた。

 

こうした脅威の高まりは、日本政府に安全保障政策の歴史的な変更を迫っている。

 

まず新しい国家安全保障戦略では、今後5年間で防衛予算をおよそ2倍にする予定である。日本は現在、防衛費に540億ドルを費やしているが、このシフトによって2027年までに800億ドル近くまで増加することになる。これは驚くべき変化である。

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