元銀行マンが偏差値最低ランクの高校の校長になって変革をもたらした─。こう見るとまるで漫画の世界の話に思えますが、現実のお話です。今回、メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の著者、本のソムリエさんが紹介するのは、実際に校長となった元銀行マンが著した、学校現場と変革の内容を語った一冊です。
【一日一冊】校長は興銀マン─4年間の出向で学校が変わった!
安川周作 著/学事出版
千葉県の私立「千葉黎明(れいめい)高等学校」に校長として4年間出向した元日本興業銀行マンの高校教育現場での奮闘記です。千葉黎明高等学校は普通科と生産ビジネス科(旧農業科)を持ち、偏差値は千葉県で最低ランクであったという。
千葉黎明高等学校に校長として着任して驚いたのは、まず、興銀では数冊の引継書が準備されていた引継ぎがなかったこと。
また、教員は新しいことに手を出したがらず、ある時、校長の提案に反対している教員に対案をたずねると「対案はありません。それは管理職の考えることでしょう」と言い放ったという。
朝の10分間読書を提案したときも、「最低でも1、2年の準備期間が必要です」と言われ、結局、校長自身が朝の10分間読書の他校のやり方を教えてもらい、1ヶ月後に生徒の朝の10分間読書をスタートさせたという。
さらに、著者が読書家であることもあると思いますが、著者は本を読まない教員がいることに驚いています。教員に「良い本」を配って感想を求めようとしたら教員が反発するということで自由形式での提出になってしまったという。夏休みの宿題として全生徒に読書感想文を書かせているのに、自分たちが同じことを要求されると抵抗するのが、現場の実態だったのです。
学校に来て驚いたことのひとつは、本を読まない教員がいることだ(p46)
面白いのは著者が千葉黎明高等学校で行った改革の中身でしょう。
まず生産ビジネス科の地域交流、資格取得、「作ったものは、食べるか、売る」という伝統を外部にPRしたこと。
朝の10分間読書をはじめたこと。
外部のセミナーや書籍を紹介したり、法政大学キャリアデザイン学部と特進クラスとの交流会を定例化させ、大学進学率を高めたこと。
就職指導で志望理由を丸暗記させていたのを、校長自らマニュアルを作り、表情と態度、身だしなみに気をつけ、良い印象を与えることに注力したこと。
一つひとつは小さな変化ですが、それらが積み重なって何かが変わっていったのでしょう。
勉強する教員はさらに勉強し、そうでない者はほとんど勉強しない(p29)