ウクライナは既に存在しない。プーチンのメンターが語った「恐怖の戦争観」

Bucharest,,Romania,-,April,05,,2017:,Aleksandr,Dugin,,Russian,Political
 

各国のマスコミが「プーチンの頭脳」と呼ぶロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏。そんな人物が日本のメディアに語った内容が今、話題となっています。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、TBSのサイトで公開されているドゥーギン氏のインタビューを抜粋掲載。その「恐怖の戦争観」を紹介しています。

プーチンのメンター・ドゥーギン恐怖の戦争観

独裁者ヒトラーには、ハウスホーファーというメンターがいました。

独裁者プーチンには、アレクサンドル・ドゥーギンというメンターがいます。昨年8月、彼の娘のダリアさんが爆殺され、世界的に有名になりました。その前は、マイナーな存在だった。ですが、ロシア研究者の間では、ずっと前から有名な存在でした。

彼の影響力については、いろいろな説があります。「西側メディアがネタとして作り上げだだけで、実はそれほど影響力はない」という人もいます。

しかし、私が元ロシア国営テレビ勤務の人から聞いた話によると、「ドゥーギン信者のドミトリー・キシリョフがロシア・シヴォードニャのトップになってから、ロシアメディアはプロパガンダマシーンに変貌した」そうです。そして、FSBやSVRにもドゥーギン信者がたくさんいる。

さて、「プーチンのメンター」と呼ばれるドゥーギンは、ウクライナ戦争について、何を考えているのでしょうか?TBS NEWS DIG2月12日付に彼のインタビューが載っていました。

“プーチンの頭脳” 思想家ドゥーギン氏初めて語る…「ロシアの勝利か人類滅亡かの二択」【報道1930】

ドゥーギンは、特別軍事作戦の失敗を認める

ドゥーギン氏 「この特別軍事作戦は軍事的な側面で見ると、失望に近いものになったと思います。2月24日に我々が行った先制攻撃によって敵は混乱し(負ける)と思っていました。素早く勝利が出来なかったことは社会を失望させたということを強調したいです。」

正直です。これは、「プーチンは当初、2~3日で侵攻が終わると確信していた。だから、ウクライナ侵攻を『戦争』と呼ぶことを禁じ『特別軍事作戦』と名づけた」という説を裏付けるものです。

ウクライナ戦争は「文明の戦い」

ドゥーギン氏 「国民はこの対立の規模を理解し始めました。これは限定的な反テロ作戦や領土の統合ではなく、文明の戦いだということを国民が理解し始めたのです。特別軍事作戦の目的を国民も政府も理解している通り、多極世界の構築であり、ロシアは中国やイスラム諸国や南米諸国等と同様に独立した極になります。一極集中の世界と多極世界との戦いである長期的で大変な戦争に準備しなければならないということを理解したのです。」

「ウクライナ戦争=文明の戦い」だそうです。

ロシア情勢をずっと追っている私から言わせてもらうと、これは【後付け】です。プーチンは当初、「楽勝だ」と考え、「特別軍事作戦」と名づけた。ところが、全然勝てない。それで、「勝てない理由」を説明する必要が出てきた。

ロシアの国営メディアは、「ウクライナに勝てない」というと「恥」なので、「ロシア軍がなかなか勝てないのは、この戦いがウクライナとの戦いではなく、NATOや西側全体との戦いだからだ!」と説明し始めました。

さらに戦争が長引くと、今度はプーチンが、「西側の支配者たちは、悪魔主義者だ!」と主張し始めました。つまり、これは「神側(ロシア)と悪魔側(欧米)の聖戦なのだ」と。ちなみに、プーチンによると、日本国は「悪魔側」です。どう見ても「神側、悪魔側が反対なのでは?」と思うのは、私だけでしょうか?

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