共同通信記者の酷い捨て台詞。H3ロケット打ち上げは本当に「失敗」なのか?

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2月17日、発射直前に打ち上げを「中止」したH3ロケット。その後に行われた記者会見での、プロジェクトマネジャーの口から「失敗」という言葉を引き出したかったと思われる共同通信記者の捨て台詞に大きな批判が起こっていますが、果たしてこの打ち上げは「失敗」だったのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「ある意味実験としては成功だった」としてそう判断する理由を解説。さらに「はやぶさ2」やスペースX社の例を上げ、予定通りに進まなかった宇宙開発を「失敗」と決めつける行為を疑問視しています。

共同通信記者が「失敗」にしたかったH3ロケット打ち上げ中止は本当に失敗か

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は17日、種子島宇宙センターから新型主力機H3ロケット初号機の発射を予定していましたが、すでにカウントダウンに入っていた状況で、直前に中止されました。JAXAによると、主エンジン「LE-9」は発射予定時刻の6.3秒前に正常に着火しましたが、その後、主エンジンを含む機体の1段目の制御システムが何らかの異常を検知したため、補助の固体ロケットブースター「SRB-3」に着火する信号が出ず、発射の0.4秒前に中止したそうです。

国産ロケットの現在の主力機は、1994年から運用されて来たH2ロケットをベースに改良が施され、2001年から運用されて来たH2Aロケットです。しかし、すでに20年以上が経過しているため、H2Aロケットの後継機として開発されたのが、今回のH3ロケットでした。全長53メートル、直径4メートル、総質量445トンだったH2Aロケットと比べると、H3ロケットは、全長63メートル、直径5.2メートル、総質量574トンと、大きさも重さもひとまわり大きくなりました。

しかし、H3ロケットの開発目的の最重要課題は「打ち上げコスト削減」だったため、ロケット本体は大きく、重くなりましたが、1回の打ち上げ費用は、これまでのH2Aロケットが85~120億円だったのに対して、何と50億円にまでコストカットすることに成功したのです。しかし、本当の意味で「成功」と言えるのは、無事に打ち上がり、搭載していた地球観測衛星「だいち3号」が予定通りの軌道に乗った時点で言えることです。

プロジェクトマネジャーの傷口に塩を塗り込んだ共同通信記者

今回は、JAXAの岡田匡史(おかだ まさし)H3プロジェクトマネジャーが記者会見で、「中止自体は非常に大きなことと受け止めている」と述べた一方で、発射直前に制御システムが何らかの異常を検知して安全に停止したことを理由に「失敗とは考えていない」との見解を示しました。この見解は「一理あり」で、制御システムが正常に稼働せず、異常を見過ごして発射し、空中で大爆発…ということにでもなっていたら、それこそ「大失敗」だったからです。

しかし、今回の記者会見では、岡田マネージャーと共同通信社の記者のやりとりが切り取りで報じられ、こちらのニュースのほうがひとり歩きしてしまいました。「中止」という表現を繰り返す岡田マネージャーに対して、共同通信社の記者は「それは一般的にいう失敗なんじゃないですか?」と何度も執拗に質問を繰り返し、それでも岡田マネージャーが「制御システムが正常に稼働したことによる中止」と説明すると、記者は「分かりました。それは一般に失敗といいます。ありがとうございます」などと突き放すように言って質問を切り上げたのです。

記事にする上で、どうしても岡田マネージャーの口から「失敗」という言質(げんち)を取りたかったのかもしれません。しかし、これまでコツコツと開発努力を続けて来て、ようやく迎えた打ち上げが「中止」に追い込まれたことで、涙ぐんで悔しがっていた岡田マネージャーにとっては、傷口に塩を塗り込まれるような気持ちだったと思います。負けて帰って来た日本代表チームの監督に、責任を追及するような物言い、とても残念でした。

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