政府が慎重に検討を重ねている、岸田首相のウクライナ訪問。G7に限れば日本の首脳だけがキーウを訪れていないことになりますが、そもそも我が国の宰相はウクライナに出向くべきなのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、この問題を取り上げた香港の有力英字紙の記事を紹介。エネルギー安保やロシアによる軍事的脅威、さらに台湾問題といった要素を鑑みつつ、首相のウクライナ訪問の是非を考察しています。
はたして岸田首相はウクライナ訪問を実行すべきか?海外も注目する日本の「国家戦略」
岸田首相はウクライナを訪問すべきなのでしょうか?
「断固たる姿勢をしめすためにも行くべきだ」という意見もあれば、「日本が戦争に巻き込まれるのは嫌だ」という意見もあるでしょう。
海外もこの問題には注目しています。
以下3月3日のサウスチャイナモーニングポスト紙の記事です。
先月、バイデン米大統領が突然キエフを訪問して以来、岸田外相も同じことをするようにという国際的圧力が高まっている。
しかし、岸田首相は、ウクライナ訪問を渋っているようだ。
その理由は、ロシアからのエネルギー供給が危うくなる恐れがあることと、戦争に巻き込まれるべきでないと考える日本国民を怒らせるかもしれないという懸念があるからだ。
木原誠二官房副長官は日本のメディアに対し、「具体的なことは何も決まっていない」と述べた。
また、「ウクライナは地理的にかなり遠い」「自衛隊が首相の安全を保証するのは難しい」とも述べた。
解説
岸田首相がウクライナ訪問が国際的な注目を浴びる要因のひとつは、G7で日本のリーダーだけが訪問していないからです。
そして今年、日本はG7の議長国です。さらにサミットが5月に広島で開かれるのですから、タイミング的にも報道されやすくなります。
広島サミット開催時、岸田首相だけがウクライナに行っていないとなれば、なんらかの形でロシアに対する共同声明がなされる場合、開催国である日本だけが腰を引けている印象を与えるでしょう。
しかし、日本がこれ以上にロシアを怒らせたくない理由もあります。記事を読み続けましょう。
エネルギー自給率が11%とG7諸国の中で最も低い日本は、ロシア極東のサハリン2プロジェクトから年間の液化天然ガスの10%近くを購入している。
エネルギー・大気浄化研究センターによると、昨年2月から7月にかけて、日本はロシアの石炭、石油、ガスを26億米ドル購入したという。
東京大学先端科学技術研究センターの山口特任助教は「ロシアの反発」は係争中の領土に関する日露交渉にも影響するかもしれないと述べた。
「日本はロシアの軍事的脅威にさらされる可能性さえある」とも述べた。
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