次の戦場は「東アジア」か?日本と韓国がNATOの飽くなき東方拡大に巻き込まれる日

 

化石的冷戦思考の見本を示す岸田ベッタリの日経

付け加えると、NATOが東へ東へ進んでウクライナに届いて、そこからさらにポーンと飛んでインド太平洋地域にまでちょっかいを出そうとしていることに、岸田政権はまだ及び腰ながらも基本的に歓迎である。

日経はもちろん岸田べったりなので、上述のマーシックの見解を紹介しながらも(紹介したこと自体は偉かったが)その後にわざわざ長めの解説を加えて、「日本の立場から見れば、NATOがインド太平洋地域への関与を深めるのは歓迎だ」と、日経はマーシックの見解に与せず、岸田はモタモタしないでもっと熱心にその方向に踏み出せと促している。ということはつまり、NATOが台湾有事に米日同盟をバックアップし、日本がNATOのウクライナ戦争遂行を助けることで世界的な「西側同盟」が成立することを喜んでいるのだろう。冷戦思考の化石の見本を見る思いがする。

さらにその解説が「日本が巻き込まれる公算が大きい台湾有事」といった文言を安易に振り回しているのはいかがなものだろうか。そこでは「巻き込まれる」のは当然だ、若しくはやむを得ないことだ、というニュアンスが自明のことのように込められていて、どうしたらそんな馬鹿げた事態を回避できるかという観点は絶無である。

こういうマスコミの何気ない言葉遣いの1つ1つが、人々に「台湾有事は起きそうだな」「起きたら日本が巻き込まれるのは仕方がないんだろうな」と思い込ませていく洗脳効果を持つのである。

「冷戦という第3次世界大戦に勝利した米国」の勘違い

さて、本誌が繰り返し述べてきたことだが、ウクライナ戦争は、米国が冷戦終結直後から主導したNATOの東方拡大の結末である。冷戦の終わりとは、東西それぞれの陣営がイデオロギーで凝り固まり、互いを相手を宿命的な敵とまで位置付けて重武装して睨み合うという憎しみの構図を解除することに他ならなかった。

一方のゴルバチョフ=ソ連大統領は、冷戦の終わりに勝者も敗者もなく、負けた者があるとすればそれは武力で世界を好きなように操ることができるという野蛮思想であることをよく理解していたので、即刻、東側の軍事同盟であるワルシャワ条約機構を解体した。

ところが他方のブッシュ父米大統領は、冷戦という名の第3次世界大戦に勝利したのは米国で、我々は遂にソ連をやっつけて「唯一超大国」になったのだと錯覚したので、西側の軍事同盟であるNATOを解消しなかったばかりか、逆にそれを旧東欧・ソ連邦加盟国にまで拡大し、その地域を政治的な影響下に置き米国製のNATO仕様の最新兵器を売り込んで経済的な利益を得る草刈場に仕立て上げた。

そのためにはありとあらゆるデマゴギー、フェイクニュース、情報操作が駆使され米国の汚い戦争を世界に容認させようとする努力が重ねられた。

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