プーチンを弱体化したいだけ。いつまでもウクライナ戦争を終らせる気がない米英の魂胆

2023.03.09
 

なぜ開戦前に露軍の動きを把握していた米英は戦争を止めなかったのか

私は、米国や英国のウクライナ戦争へのかかわりに方に焦点を当ててきた。重要なのは、開戦前の2022年11月に、米英はロシア軍の動きを完全に掌握していたことだ。ロシア軍約9万人がウクライナ国境沿いに終結していたことも、その予想されるウクライナへの侵攻ルートも的中させていた。

戦闘が始まると、ウクライナ軍が、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などを把握して市街地で待ち伏せして攻撃し、ロシア軍は、多数の死者を出した。これは、米英の情報機関の支援があったからと考えられる。

しかし、そこまでわかっているならば、どうして米英は戦争を止めなかったのか。米英にとってウクライナ戦争が、「損失」が非常に少なく、得るものが大きい戦争だったからだ。開戦後も、停戦に向けて欧州首脳の努力が続く一方で、米英は対話による紛争解決に消極的な姿勢に終始してきた。それには、経済面・政治面の2つの要因があった。

経済面では、ウクライナ戦争開戦後、ロシアに対する経済制裁が行われた。その結果、高インフレにより、世界的に経済が悪化した。制裁を加えた側にも損害があるということだ。だが、あえて言えば、米英にとってウクライナ紛争は経済的な好機でもある。

米英の大手石油会社に訪れた千載一遇のチャンス

1960年代後半以降に、ロシアと欧州の間に天然ガスのパイプライン網が敷かれるようになる前は、欧州の石油・ガス市場は米英の大手石油会社(メジャー)の牙城であった。そのメジャーにとって、今回のロシア産石油・天然ガスの禁輸措置は、欧州の石油ガス市場を取り戻す千載一遇の好機となるのかもしれないのだ。

ウクライナ戦争の前、ロシアは欧州のガス供給の約40%を担っていた。そのパイプラインによる供給の約65%がドイツと結ぶノルドストリーム経由だった。ノルドストリーム経由の供給は8月末から停止している上に、2022年9月26日、破壊工作とみられる爆発が起きた。近い将来、供給が再開される見込みはない。この、ロシア経済への影響は甚大である。

だが、2022年に、ロシアの石油・天然ガス分野の輸出は増加したという。ロシアへの経済制裁に加わっていない中国、インドや新興国向けの輸出が増えた。また、世界的に石油・ガス価格が高騰する中、それらの国々に対して、ロシアが格安で取引しているからだ。だが、これは長く続くことはないはずだ。パイプラインによる石油・ガスの輸出額の規模は、ロシアの輸出額の約6割を占めていた。そのうち、欧州向けの比率は、石油の5割超、天然ガスの7割超を占めてきたのだ。

その最大の問題は、パイプライン・ビジネスの特徴が「売り先を変えられないこと」だ。ロシアが欧州向けのパイプラインを止めれば、単純に輸出の売り上げがなくなる。それを、他国向けに振り替えることは不可能だからだ。たとえ、中国、インド、新興国向けを増産しても、その大きな穴を埋めることはできない。それは次第にロシア経済を追い込むことになるだろう。

print
いま読まれてます

  • プーチンを弱体化したいだけ。いつまでもウクライナ戦争を終らせる気がない米英の魂胆
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け