交通費の未払いで会社を提訴。「家と近いから払わない」は通用するのか

 

裁判の結果はいかに

会社が負けました。

その理由は以下の通りです。

  • 会社が提出した証拠の社員の自宅から会社までの距離(1.7Km)はほぼ直線距離に近い
  • 実際の通勤の際は、この社員は駅まで徒歩で移動し、会社の最寄り駅まで電車に乗り、最寄り駅から会社まで徒歩で移動していた。その距離で測ると3.3Kmであった。
  • この通勤経路が「最短の公共交通機関利用して」の趣旨に反するまでの不合理さは認められない
  • その経路前提とすると賃金規程の定めに示された距離要件欠いているとは認められない

いかがでしょうか?

実務的には今回の裁判のような内容で揉めることはかなり稀でしょう。

仮に2Km未満だったとしても実際に電車やバス使用していれば支給していることも多いでしょうし、例え歩けない距離では無くても、その社員が女性であれば帰りに暗い夜道歩かせるのか、という問題にもなります。

(男性であれば歩かせて良い、という意味ではもちろんありません)

そこで、今回お話したいのは、交通費の就業規則への記載の仕方についてです。

実際にいろいろな会社の就業規則拝見させていただくと

「上限〇円とし、実費支払う」

とだけ記載されていることが非常に多い印象があります。

そうなると何が問題か?

例えば、会社までの経路が2つあったとします。

そしてその金額が違ったとします。

その「高いほう」の経路使用していることにして偽装の申請してきたらどうでしょうか?

先ほどのような就業規則ですとそのまま支払うしかなくなります。

そこで就業規則に

「通勤は最も安価な経路とする

と入れておけばそれ防ぐことができます。

もちろん

「最も安価な経路」

「最も早い経路」

とは限りません。

安くすませるために、通勤時間が伸びて負担が増えてしまっても本末転倒ですので、そこは調整する必要があります。

また、本当はどの経路使用しているのかなんて実際は調べようも無いので、限界はあります。

ただ、就業規則に細かく入れることで一定の抑止力にはなります。

いざというときのために整備しておきたいですね。 

image by: Shutterstock.com

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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