セクハラはジェンダーヒエラルキー、すなわち性差別が生む暴力であり、社会構造の問題です。「男は外=金を稼ぐ人、女は家=ケアする人」とういう性別役割は、「男は偉い、女は従うもの」という性差別として、日本社会に根付いてきました。
それは「性的被害を受けるのは、女性の側に問題がある」という間違った考えと、「女性の労働は家計の補助的な仕事」という序列を生んだ。職場のセクハラ問題はこの2つの差別が掛け合わされたものです。
つまり、どんなにセクハラをなくそう!セクハラを許してはだめ!と教育をしたところで、働く女性の権利や尊厳の実現と連動することがない限り、セクハラはなくなりません。
防衛省は昨年、全自衛隊を対象に異例の「特別防衛監察」を実施し、組織としてハラスメント対策に取り組む姿勢を見せましたが、働く女性の権利や尊厳の実現には至っていません。
2月27日、セクハラを受けた女性自衛官が損害賠償を国に求める訴訟をおこしたのですが、記者会見は弁護団だけで行われました。なぜか?女性が自衛隊側から処分されることを恐れて、出席できなかったそうです。
セクハラやパワハラを訴えた際に、被害者が職場から批判されたり、居場所を失うのはよくあること。上下関係が厳しく、階層主義が強けば強いほど、声をあげたくてもあげられない、苦しくても泣き寝入りするしかない状況に陥ります。
その象徴が悲しいかな、災害が起こるたびに、多くの人を勇気づけ、助けてくれる隊員たちがいる、「自衛隊」という組織です。今回、在宅起訴になったことが、自衛隊で働くすべての隊員たちが、生き生きと働ける職場づくりのきっかけになって欲しいと心から願います。
みなさんのご意見、お聞かせください。
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