「一生懸命」は忠臣蔵にも書かれていた!
「一生懸命」という表記が使われるようになったのは、江戸時代からとも言われています。仮名手本忠臣蔵の三段目、裏門の段に「主人一生懸命の場」という表記が見られます。
江戸時代になると、領土を巡って戦うこともなくなってきたので、かつてのように「懸命に土地を守る」という必要もなくなって、「一生懸命地」という意識は薄れてきたのかもしれません。
「一所(いっしょ)」が「一生(いっしょう)」に音韻変化するのは、比較的自然な流れです。また、「一生の不作」「一生のお願い」といったように、「生きている間に一度しかないようなこと」「生涯にかかわる重大なこと」という意味が「一生」に加わったことも、もう一つの背景にあるかもしれません。
侍ジャパンと「一生懸命」のえにし
「生涯にかかわる重要なことに対して、力を尽くして頑張る」という意味が、「一生懸命」ということばを生み出したといえるような気がします。これは「一つ所を頑張る」ということでもあるので、「一所懸命」と通底しているというのは、やや強引でしょうか。
それでも、小学生のころに敵意をもって見ていた「一生懸命」のイメージは、いまでも和らぐことがないのです。武家社会のなかで生まれた「一所懸命」ということばに由来する「一生懸命」が、侍ジャパンという野球チームで甦る。ことばの不思議な縁(えにし)のように思えます。一生懸命が「思いっきり楽しむ」という意味をもつようになれば、WBCの見方もまた変わってくるように思うのだけれど。
(メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』3月25日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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