暴力団や独裁者の資金も管理。破綻回避した「クレディ・スイス」の深い闇

 

発端 ファミリーオフィスとアルケゴス・ショック

騒動のそもそもの発端は、2021年3月に起きたクレディ・スイスの巨額損失事件。ファミリーオフィスである「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」との関わりが原因による損失が、経営危機の一因とされる。

「ファミリーオフィス」とは、超富裕層の家族が自分たちの資産を管理するために設立した会社。

2008年のリーマンショック後、オバマ政権が2010年に制定した「ドッド・フランク法」により、投資会社であるファミリーオフィスが自分たちの家族の資産のみを運用する場合には、証券取引委員会(SEC)の規制対象から外れることに。

そのため、ヘッジファンド・マネージャーなどの投資家たちは、規制を回避するために、ファミリーオフィスを設立したりする。ファミリーオフィスの日本における認知度はなかった。

しかし、2021年のアルケゴス・ショックでその存在が知られるように。韓国生まれのアメリカ人投資家・ビル・フアン氏が設立したファミリーオフィスのアルケゴス・キャピタルが集中投資していた先の株価が暴落し大損失を出す。

これを受けて、アルケゴスと取引をしていた金融機関や投資家がアルケゴスからの資金回収が出来なくなり、金融機関も損失を被る結果に。

そしてクレディ・スイスも、アルケゴス・ショックにより業界最大の約5,200億円の損失を出した。

クレディ・スイスの闇 日本の暴力団や世界の独裁者の資金も管理

チューリッヒ大学でスイスの金融史を研究してきた現代史教授トビアス・シュトラウマンは、スイス紙「ル・タン」に、クレディ・スイスは、

「不祥事を繰り返し、それに伴って損失を何度も出してきた。しかし、問題への対応が遅かった」(*4)

と述べた。

スイス紙「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング」(*5)によると、クレディ・スイスは、世界の独裁者や犯罪組織の不正資金を長年受け入れてきたという。

世界の金融機関では、マネーロンダリングができないように顧客の身元確認や資金の出所の確認を徹底するよう厳しく規制されている。

しかし、スイスの銀行や当局は、出所が怪しい資金について、厳しく問わなかったようだ(*6)。

たとえばクレディ・スイスは、日本の暴力団の資金も受け入れ、マネーロンダリングを助けたことがある。

スイスメディア「スイス・インフォ」によると、2003年から4年にかけ、日本の警察は日本最大の暴力団・山口組系の違法闇金融にかかわる6名を逮捕、その主犯格であった「ヤミ金の帝王」といわれた梶山進はクレディ・スイスに口座を保有していた。

■引用・参考文献

(*1)「クレディ・スイスをUBSが買収で合意 スイス政府などの支援で」NHK NEWS WEB 2023年3月20日

(*2)NHK NEWS WEB 2023年3月20日

(*3)The Financial Times Limited 2023「クレディ・スイス買収交渉の舞台裏」swissinfo.ch 2023年3月21日

(*4)ハンデルスブラット「日本のヤクザや世界の独裁者をも支援──こんなに黒かったクレディ・スイスの実態」COURRiER JAPON 2023年3月21日

(*5)「Diktatorenkonten, Holocaust-Gelder oder ein Kollaps im Berner Oberland: Der Bankenplatz hat schon oft gebebt

(*6)ハンデルスブラット 2023年3月21日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年4月2日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

初月無料購読ですぐ読める! 4月配信済みバックナンバー

※2023年4月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、4月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年4月2日(日)号 スイス大手金融グループ「クレディ・スイス」、UBSに買収 クレディ・スイスとは? 日本の暴力団や世界の独裁者の資金も管理(4/2)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年4月1日(土)号 野球WBC閉幕 侍JAPAN優勝でも日本の野球人気復活に結び付かない、これだけの理由 「野球離れ」の真犯人はマスゴミだ!(4/1)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2023年3月配信分

  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月26日(日)号 ガーシー議員 参院除名決定 「除名」とは? 過去の除名議員 世界から40年遅れの主権者教育(3/26)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年3月4日(土)  ChatGPT の凄さと限界 ChatGPT を支えるマンパワーの闇 問われる人間側の学習号(3/4)

2023年3月のバックナンバーを購入する

2023年2月配信分

  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月26日(日)号 難航するスウェーデンとフィンランドのNATO加盟 なぜトルコは反対する? トルコの独自外交にみる 「したたかさ」(2/26)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月25日(土)号 ロシアのウクライナ侵攻から1年 一方、ロシアを支持するグローバルサウス ロシア、核を使うか(2/25)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月19日(日)号 相次ぐ凶悪犯罪 しかし日本の治安は本当に悪化しているか? 世界と比べて少ない日本の警察官の人数 結局は警察機構の「やるやる」詐欺か?(2/19)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月18日(土)号 再び起こる「飯テロ」の背景 問題の本質は何か? ”トイレ”と化すワイドショー報道 マスコミの報道が模倣犯を生む(2/18)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月12日(日)号 荒井秘書官 同性婚めぐり差別発言 更迭 ~2~ 人権後進国日本 統一教会”同性婚ヘイト”受け継ぐ岸田政権 すでに日本人は国を「捨てて」いる 増える海外移住者 (2/12)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月11日(土)号 荒井秘書官 同性婚めぐり差別発言 更迭 ~1~ 問題の経緯 オフレコとオンレコ 荒井秘書官とは(2/11)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月5日(日)号  映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~3~ 映画の“多様性は”どこまで守られるのか 日本のミニシアター文化を維持していくために (2/5)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年2月4日(土)号 岸田首相「異次元の少子化対策」の行く末 「晩婚化」というウソ 奨学金問題 福祉国家でも少子化が進んでいるのというのに (2/4)

2023年2月のバックナンバーを購入する

2023年1月配信分
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月29日(日)号 ゴッホ「ひまわり」トマトスープ事件と地球温暖化懐疑論者 どちらがより暴力的か、冷静に考えよう(1/29)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月28日(土)号 福岡・博多ストーカー事件の背景 求められる性教育のアップデート 平等教育の徹底を(1/28)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年1月22日(日)号 アフガニスタンは今どうなっている? アフガニスタンの歴史 タリバンとは? 飢餓 女性差別 臓器売買(1/22)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月21日(土)号 “ガラパゴス”国家の象徴 「駅伝」 その弊害 主催がマスゴミなので報道せず 代わりに教えよう(1/21)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月15日(日)号 岸田首相“唯一の”レガシー 原発再活用の虚構 「原発回帰は歴代政権が手が出せなかった」 原発燃料、結局はロシア頼み(1/15)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月14日(土)号 米国下院議長 投票15回目でようやく決まる マッカーシー議員とは? 下院議長とは? 「フリーダム・コーカス(自由議連)」が造反(1/14)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月8日(日)号 映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 ~2~ 東宝一強体制の理由 しかし国際市場では通用せず(1/8)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月7日(土)号 岸田首相、防衛増税前の「解散」発言が波紋 萩生田氏の口車に乗せられて? 自らの首を絞めるのか(1/7)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年1月1日(日)号 中国、「ゼロコロナ」対策転換で感染爆発 若者の反発恐れ、方針転換 今後、死者149万人との予測も(1/1)

2023年1月のバックナンバーを購入する

2022年12月配信分
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月31日(土)号  映画「すずめの戸締り」にみる日本社会の戸締り ”誰が開きっぱなし”の扉を閉めるのか?(12/31)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月25日(日)号 国民民主党、連立入り? 自民と国民、共鳴する”民社党”の遺伝子 統一教会との関係も 公明党はどうなる? 創価学会の集票力懸念(12/25)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月24日(土)号ディズニー&ジェームズ・キャメロンVS和歌山・太地町&二階俊博 映画「アバター」続編で対立の火ぶたが切って落とされる なぜ日本はイルカ漁に固執するのか? 結局は”利権”目当てか?(12/24)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月18日(日)号 防衛省が”ステマ”工作研究? 自称インフルエンサー、所詮は利用される運命(12/18)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月17日(土)号 どうなる? サッカーW杯2026年大会 48カ国が参加 グループステージは3試合から2試合へ 高騰する放映権料 もはや“有料”放送が当たり前?(12/17)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月11日(日)号 旧統一教会と地方議員の”接点”明らかに 一方、障害者支援施設SANCYO/TANOSHIKAの嘉村裕太は、精神障害者に対し、「政治に文句をいうなら統一教会の支援を受けて政治家に立候補せよ」と圧力 福岡県大川市長倉重良一・久留米市長原口新五も同調(12/11)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月10日(土)号 どうなる、岸田首相の行く末は? 退陣? 早くても年内まで?  「検討使」の裏で着々と右翼政策は実行  自民、国民民主と連立?(12/10)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月4日(日)号 防衛費増額 有識者会議にメディア関係者  法人税増税盛り込まず 自民党とマスコミ(12/4)
  • モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2022年12月3日(土)号 政治問題化するサッカーW杯 なぜカタールへの招致が決まったのか? カタールと日本 カタールで起きていることは、未来の私たち 地球温暖化とスポーツ(12/3)

2022年12月のバックナンバーを購入する

image by: Michael Derrer Fuchs / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版) 』

【著者】 伊東 森 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print
いま読まれてます

  • 暴力団や独裁者の資金も管理。破綻回避した「クレディ・スイス」の深い闇
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け