4月15日から2日間に渡り札幌で開かれたG7環境相会議ですが、記者会見での西村経産相の発言に対するドイツ環境相の反応が話題となっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、新聞にも掲載されたその模様を誌上で紹介。さらに同会議での我が国の呆れるばかりの主張を取り上げるとともに、日本がG7から除外される可能性についても言及しています。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
なぜ原発事故当事者の日本が「出口のない処理水」をドラム缶に詰め続けたのか?
主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は16日、札幌市で2日間の日程を終え、閉幕しました。
日独伊の閣僚による共同記者会見で、西村経済産業相は、「処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、そして、科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取り組みが歓迎される」と発言。それに対し、ドイツのレムケ環境・原子力安全相が、「原発事故後、東電や日本政府が努力してきたことには敬意を払う。しかし、処理水の放出を歓迎するということはできない」と話したと、新聞で報じられています。
西村氏は会見後、報道陣に「私のちょっと言い間違えで、『歓迎』に全部含めてしまった」と釈明。処理水の放出については「IAEAの独立したレビューが支持された」と訂正したそうですが、言い間違いにも程が有ります。
奇しくも、ドイツでは15日に、最後の原子炉3基が発電のための運転を停止しました。2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、決めた「脱原発」が完了したのです。2035年までに再生可能エネルギーのみによる電力供給を目指すそうです。
いったいなぜ、ドイツが日本で起きた原発事故を教訓に、脱原発を掲げ、実行に移したのに、当事者である日本は最初から「出口のない処理水」を、ドラム缶に詰め続けたのか?
いったいなぜ、福島第一原発事故の最大の教訓の一つとして作られた、「40年ルール」を、わずか11年で変えてしまうのか?
そもそも「40年ルール」は、当時の民主党政権と、野党だった自民党と公明党の3党で、合意して決まった法律です。国民の代表である国会で、しかも超党派で法改正したのに、岸田首相の「原発の運転期間のルールの見直ししようぜ!」の一言で「例外」に向けて動き出しました。
岸田首相が、選挙の応援演説の直前に爆発物が投げ込まれた事件に、岸田首相も政治家たちも、「民主主義の根幹をゆるがす行為」と、まるで〇〇のひとつ覚えのように繰り返しますが、官邸主導で法律を変えることは、民主主義の根幹をゆるがす行為」だと思うのです。
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