楽天へのプラチナバンド割当案が浮上。「出来レース」の行方は?

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原状回復の費用負担や工事期間などの問題で、なかなか決着しなかった楽天モバイルへのプラチナバンドの再割り当て議論に解決の見込みが出てきたようです。NTTドコモの指摘をもとにした実験で、700MHz帯に3MHz幅×2の利用可能な帯域があるとのこと。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、この帯域を楽天モバイルに割り当てるのが既定路線だとしても、正式決定までに、各キャリアがどう動き、総務省はどう審査するのか、しっかりと見ていく必要があると伝えています。

楽天モバイル優遇プラチナバンド、3キャリアはどうする?

総務省では、携帯電話向けに新たに700MHz帯を用いることを検討してきたが、有識者会合で「技術的に可能」と改めて報告書案が出された。

プラチナバンドについては、3キャリアから返上してもらい、それを楽天モバイルに割り当てるという流れが決まりかけていた。しかし、貴重なプラチナバンドを召し上げられ、さらに関連する工事費として1000億円規模の負担を強いられることになる3キャリアが猛反発していた。

そんななか、NTTドコモが「特定ラジオマイクや高速道路交通システム(ITS)間で3MHz幅×2の帯域が利用できるのではないか」という新たな提案を出してきたのだった。同審議会でテレビ・特定ラジオマイクと携帯電話の共用の可能性について、実験が行われ、いくつかの配慮が必要なものの「技術的に可能」という結論に至った。

これを受けて松本剛明総務大臣は秋ごろの割り当てを目指すとした。楽天モバイルも「プラチナバンドの新たな選択肢になりうる700MHz帯の3MHzシステムに対する早期の割当てを希望させていただきました。プラチナバンドを割当ていただいた場合には、当社のネットワーク技術および既存の当社基地局サイトを活用し、柔軟かつコストを抑えた効率的な基地局設置を行い、お客様に安定的かつ高品質なサービスを提供していきたいと考えております」とのコメントを発表した。

今後、注目したいのが、どのようなプロセスを経て、楽天モバイルに700MHz帯が割り当てられるか、だ。

通常、新たな周波数帯が割り当てられる場合、どのキャリアも割り当て希望に名乗りを上げる。必ずしも欲しい周波数帯でなくても、将来的なことを考えて、とりあえず希望だけは出しておくということが多い。将来的に本当に欲しい周波数帯が出てきたときに「この間は希望しなかったじゃん」と突っ込まれるのは避けたい。そのため、あえて、比較審査で不利になるような計画値にしておいて、割り当てられるのを意図的に避けるなんてことをしているようだ。

今回は700MHz帯ということで、3キャリアとも本来ならば「欲しい」と手を上げる必要があるだろう。当然、総務省としては楽天モバイルに渡すことを前提に議論を進めてきたわけで、3キャリアに割り当てられることはあり得ない。

3キャリアは割り当てられないとわかっていながら、割り当て希望に名乗りを上げ、計画書を出すことになるのか。その時、意図的に比較審査に不利になるような計画値を出してくるのだろうか。総務省がなんの審査も経ずにいきなり楽天モバイルに700MHz帯をポンと与えるというのも、無理がある。

楽天モバイルとして、それなりの工事費を負担する計画を出さないことには3キャリアや総務省も納得しないだろう。一方でさらに設備投資費負担が増す計画が明らかになれば、さらに財務的に厳しい状況に追い込まれることが可視化されるだけに、金融市場からの評価がさらに下がる恐れもある。いずれにしても、楽天モバイルへのプラチナバンド割り当ては、これからもしばらくは一筋縄にはいきそうもないようだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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