「噂の眞相」とはどのような雑誌か?
中居正広の中絶強制スキャンダルを唯一報道した『噂の真相』とはどのような雑誌だったのだろうか。『噂の眞相』は、岡留安則氏(2019年1月31日死去)により、1973年に創刊。
月刊誌の総合雑誌部数では、『文藝春秋』につぐ規模を誇っていた。誌面の内容は、皇室、政治経済、あらゆる芸能スキャンダルまで、
「タブーなき雑誌」
を標榜。古くからジャニー喜多川氏に性加害問題を取り上げていた。
1999年に5月号は、東京高等検察庁検事長・則定衛のスキャンダルを報道、朝日新聞が後追いで1面トップで掲載し、則定は結局、辞職に追い込まれる。
2000年には、6月号で森喜朗氏の東京都売春禁止条例違反での検挙歴を掲載。検挙されたとされる当時、売春防止法は未制定で、都道府県条例で売買春を禁止。
森氏は名誉棄損で民事訴訟を提起するも、東京地裁は『噂の眞相』の申し立てに基づき、警視庁へ検挙歴の紹介を依頼。しかし警視庁は拒否した。結果、2001年に賠償金なしの和解となった。
例えば、現在は『週刊文春』が“文春砲”として名を馳せているが、しかし文春は作家への都合で記事化しづらい出版社系雑誌であるため、作家のスキャンダルは報道しない。
【関連】ジャニーズと大物作家は完全スルー。日本の大手メディアは“カス”ばかりである
他方、『噂の眞相』は作家スキャンダルも報道していたため、『週刊文春』は噂の眞相の足元も及ばない。
2014年7月からは噂の眞相のデスクと元副編集長が、ニュースサイト「LITERA」を立ち上げている(*4)。
ジャニーズ・タブーの構図
2000年代半ば、筆者が大学時代にメディア研究を始めた理由は、まさに以下のようなものだった。ようは、なぜ日本に「タブー」は存在するかである。
インターネットが普及する以前、20世紀の時代には、電通や統一教会、そしてジャニーズの問題については、『噂の眞相』以外、まったく報道しなかった。
ところが21世紀に入り、インターネットの普及とスマートフォンの普及によるネットニュース・メディアが増加。既存の利害関係を持たない媒体が増加した。
それとともに、2010年代に入り、一連の東京五輪汚職に伴う電通の“自爆”、安倍元首相銃撃による衝撃のもとの旧統一教会バッシングにより、タブーは瞬く間に崩れさった。
しかしだ。“たかが”、“所詮”芸能人のスキャンダルの範疇ともいえるジャニーズの問題は、いまもって“タブー”のままだ。
岡本さんが外国特派員協会で記者会見して以降も、新聞各紙は社会面などで記者会見の内容を報じたが、テレビ局はNHKをのぞきすべて黙殺。
では、なぜジャニーズのスキャンダルはタブーなのか。
新聞は傘下にテレビ局を持つ。そのテレビ局は、ワイドショーとて、ドラマなどでジャニーズのタレントを使う立場だ。週刊誌は、同じ出版社でジャニーズタレントのカレンダーを出版する。
このような日本のメディア・システムが“タブー”を生んだのだ。
■引用・参考文献
(*1)「それでもジャニーズ問題を報じないメディアの末期的症状」ビデオニュース・ドットコム 2023年4月15日
(*2)片岡亮「テレビ、新聞、雑誌…マスコミが『統一教会の報道を避けてきた』恐るべき実態」現代ビジネス 2022年8月2日
(*3)田部祥太「Jr.だけじゃない。中居クンも過去に『妊娠・中絶』スキャンダルが」LITERE 2014年7月26日
(*4)「LITERA」
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』
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