「日本消滅」を目標にする可能性も。中国の“覚悟”を侮ってはいけない理由

shutterstock_1419581507
 

日本の防衛力を高めることが「台湾有事」を防ぐことにつながるのでしょうか。台湾が独立を宣言するようなことがあれば、どんな犠牲を払ってでも阻止するのが中国の「覚悟」で、そんな中国と対峙する「覚悟」が日本にあるのか問うのは、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、日本の政治家やメディアが「ある」か「ない」かだけでしか「台湾有事」を語っていないと視野の狭さを指摘。台湾の野党国民党の馬英九台湾元総統が訪中したのをはじめとして、台中の接触が活発化し見過ごせない変化が起きていると伝えています。

台湾有事とはしゃぐ日本が見えなくなっている台湾海峡の変動

以前このメルマガでも書いた通り、「台湾有事」とは、「ある」か「ない」かという単純な話ではない。中国共産党が軍事力を行使する前には、それこそ無数の選択肢があるからだ。しかも、もし「台湾有事」を話題にするならば、問われるべきは戦術ではなく覚悟だ。

日本ではよく「防衛力を高め、中国に侵攻を思いとどまらせる」と表現される。しかし、「いかなる犠牲を払っても台湾の独立は阻止する」というのが中国共産党の覚悟だ。「思いとどまらせる」ことは容易ではない。

かつて中国は、核兵器もレーダーもなく、みすぼらしい装備と乏しい資源しかないまま米軍に挑んだ。朝鮮戦争である。60年代末には世界最強の軍事力を誇った旧ソ連を相手に全面戦争の危機を迎え、一歩も引かなかった。

損得勘定を捨てた中国の恐ろしい一面だ。その状態に中国を追い込めば、周辺の国々、なかでもアメリカの手先となって台湾問題に介入した日本は無事で済むだろうか。

自国を焦土と化す覚悟で戦争に踏み切る中国が自衛隊だけを相手に済ませるだろうか。日本のインフラを狙って徹底的に破壊するのではないだろうか。少なくとも中国の世論は沸騰し、歴史問題との相乗効果で「日本消滅」を新たな目標とするだろう。それが覚悟だ。

そんな大げさな話、との批判もあるだろう。だがそれ以前に、もしこの一帯で戦争が起これば、日本は通常の経済活動を続けられるだろうか。世界のマネーは一斉に引き上げてゆくだろう。欧米先進国の企業はこうしたライバルのオウンゴールを見逃さないだろう。紛争をコントロールできなかった愚かな国の常として大量の兵器や物資も売りつけられるから借金は膨らみ、人々の生活は困窮を避けられない。

先進国はボロ儲けの機会を簡単には手放したくないから、両国民の対立感情を煽って和平の機会を阻み続ける。止められない戦争だ。そんな泥沼に陥ってから「何を目的に台湾有事を叫んだのか」と後悔しても遅いのだ。

少々前置きが長くなったようだが、本題に入ろう。日本人がまるで二進法のように「有事」が「ある」か「ない」かしか話題にできない原因の一つは、中台の一面しか見えていないためだ。だが現実の海峡には、密度の濃い交流も続いているのだ。

この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「日本消滅」を目標にする可能性も。中国の“覚悟”を侮ってはいけない理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け