文章チェックのプロが教える「旅の行程」と「旅の思い出」の大きな違いとは?

 

「遠征」と「旅行」の違いってなに?

大まかに段落を三つに分けて、番号を振りました。確かに「旅の思い出」に違いないのですが、体験したことが列挙されているに過ぎません。

1)では「アイドルオタクにとって、アイドルの地方公演に行くのは、遠征でもあり旅行でもあるのだ」と書いています。「遠征でもあり旅行でもある」という切り口は、大いに読み手に期待を持たせます。しかし、それについて言及がありません。アイドルの地方公演に行くことを「遠征」というのだそうです。一方で、「旅行でもある」と言っています。この対比で何が展開されるのだろう、という期待に答えられていないのです。

そして、2)は会場に行くために乗るタクシーの話に話題が移ります。これも、相乗りという合理的な方法を取る面白さはあるのですが、会場に着いて、「『お互い楽しもう!』と別れ」て、それきりです。

3)では、帰りのタクシーの話になるのですが、「運転手さんおすすめのお店」を紹介してもらった話だけが書かれています。そこで食べてどうだったか、という感想もないのです。それって、旅の行程じゃありませんか?

1)アイドルオタクの「遠征と旅」→2)タクシーの相乗り→3)タクシー運転手さんのおすすめの店という「旅の行程」を紹介しただけで、肝心な「旅の思い出」を伝えたことにはならないのです。書いている本人も、何か面白くないと思っているのです。ところが、何が面白くないのかが見えていないのです。

「旅」というタイトルで、旅そのものを書く必要はないのです。「旅」が、出会いであったり、決断であったり、喜びであったり、悲しみであったりします。「旅」ということばの広がりのなかから、「旅」が意味するものを読み手に伝えられればいいのです──(メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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