習近平の怒りを買った韓国。中国の「魔の手」から逃れられるのか

2023.05.23
 

台湾問題に口を挟んだ韓国に激怒の中国

こういったユン大統領の行動や姿勢に、中国は反発を強めている。4月の訪米でユン大統領が台湾問題に言及したことに、中国政府は台湾は内政事項であり、他人が口出しすることはできないと強く反発した。また、昨年11月、習近平国家主席とユン大統領はAPEC首脳会合に合わせてインドネシア・バリ島で会談した際、北朝鮮への対応で日米韓の連携を重視するユン大統領に対し、習氏は韓国が率先して北朝鮮と関係を改善するよう求めるなど、双方の考え方の違いが浮き彫りとなり、昨年5月に両国の外務大臣がオンラインで会談した際、中国側が韓国に対して米国か中国かなど陣営に分かれて対抗するべきではないと韓国をけん制するなど、ユン政権以降両国関係は悪化していった。

ユン大統領のこの姿勢は残りの任期4年間変わらないだろう。ユン大統領はそれどころか自由で開かれたインド太平洋の価値観を共有し、日米豪印で形成されるクアッドに参加する意欲も示している。中国が嫌がることをどんどんしようとしており、中国と韓国の関係悪化は既に避けられないところまで来ている。

韓国を襲う経済攻撃という中国の魔の手

両国間で軍事的緊張が高まるわけではないが、中国の韓国への不満は高まるばかりで、中国が経済攻撃を韓国に加える可能性がまず考えられる。近年、中国はいじめっ子のように何かあるごとに経済攻撃で相手を苦しめている。たとえば、中国は関係が悪化した台湾(パイナップルや高級魚など)やオーストラリア(ワインが牛肉など)からの輸入を突然一方的に停止したり、日本に対しても2010年の尖閣諸島衝突事件(中国漁船と海上保安庁の船が衝突し、日本側が中国人船長を逮捕した)の際、報復措置として日本向けのレアアース輸出禁止に踏み切った。

今日、韓国にとって中国は最大の貿易相手であり、正に中国による経済攻撃の餌食となる。何が餌食の対象になるかは分からないが、韓国の中国依存度が高い品目などがその対象となろう。その危険性に気付いているユン大統領は、韓国経済の中国依存からの脱却に動き始めた。ユン大統領は輸出戦略の転換を主張し、たとえば大手企業のサムスン電子や現代自動車など財閥大手に対して工場建設などを米国や日本などで進めることを提唱するなど、軸足を中国から移し始めた。中国の魔の手から逃げられるか、これが極めて大きな問題になりつつある。

image by: 首相官邸

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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