岸田政権の支持率上昇にため息。G7でいったい何が好転したのか?

20230521kaiken01
 

ゼレンスキー大統領の対面でのG7参加が実現したことによって、メディアのG7広島サミット報道は一層過熱。露出度によるものなのか、各社調査で岸田政権の支持率が軒並み上昇していることに嘆息するのは、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、G7が打ち出すメッセージは「戦争継続」や「排除」であって、平和は一歩も近づいていないと指摘。中国に向けられた「経済的威圧」への懸念も、威圧と言うにはグレーなものが多くあると解説しています。

G7が打ち出す「経済的威圧への深い懸念」に対して中国が反発する理由

一度は「オンラインで参加」と、トーンダウンしたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が広島に降り立った。日本中がこのニュースに沸いた。

だがゼレンスキーは戦争当事国のトップである。それをあたかもアイドルでも来日したかのように追い回すメディアには辟易させられた。それも束の間、今度は岸田政権の支持率が上昇したというニュースが流れ始め、もはやため息しか出なくなった。いったい何がそれほど好転したというのだろうか。

世界が確実に平和へと向かい、経済発展の基盤が整い、ひいては日本経済にも明るい兆しが訪れるという話なのだろうか。G7(先進7カ国)広島サミットの何を見てそう思ったのか、逆に誰か教えてほしい。

ロシア・ウクライナ戦争では、ウクライナを「必要とされる限り支援」し、ロシアに対しては「即時かつ無条件で撤退するべき」との声明を出した。対ロ経済制裁では、さらに一段階引き上げ、ダイアモンドの輸出に網をかぶせる。一方でウクライナにはいよいよ戦闘機を供与する話が具体化しつつある。

これは「武器は提供するからしっかり戦え」というメッセージに他ならない。少なくとも「平和に一歩近づくことができた」と胸を張って誇れる内容ではない。こうしている間にも戦争で多くの命が失われ、その一人一人にこの世で自己実現をする権利があったことを思えば、なおさらだ。

気になるのは、ここ数年、G7に限らず西側先進国が中心となる国際会議の裏のテーマが「排除」である点だ。ターゲットは言うまでもなくアメリカの不興を買っているロシアと中国である。これは当然のこと、新たな対立や紛争へとつながり、ハンドルを誤れば巨大な犠牲を生む危険をはらんでいる。

本来、先の大戦に大きな責任を感じて戦後を迎えたはずの日本であれば、ことさら慎重に対処すべき流れと考えるべきではないのだろうか。

G7報道に関して言えば、ヨーロッパのメディアが一斉に報じたように、「グルーバル・サウスの取り込み」こそが一つの大きなテーマだった。その狙いは中ロ包囲網の抜け穴を塞ぐことだ。短期的には対ロ経済制裁の綻びを繕うためであり、長期的には中国の影響力を少しでも削いでおこうというものだ。

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