岸田政権の支持率上昇にため息。G7でいったい何が好転したのか?

 

興味深かったのは、この視点で報じたほとんどのメディアが最後に「とはいっても思惑通りにならない」と結んでいたことだ。その理由は「グローバルサウスといっても思惑はバラバラだから」という。しかし、むしろ彼らは「バラバラ」なのではなく、「それほどバカではない」と解説されるべきだろう。

そもそも中国包囲網といっても足元のG7内でも足並みはそろっていない。アメリカの本来の思惑は出来る限り中国をサプライチェ─ンから切り離し弱体化させることであり、欧州にも同調を求めていた。しかし今年の初めごろから欧州は明らかに独自の道を歩み始めたのである。

切り離しを意味するデカップリングではなく、中国依存のリスクを管理するデリスキングへと舵を切ったのだ。その変化については、このメルマガでもすでに触れた通りだ。そこで妥協的に打ち出されたのが「経済的威圧への深い懸念」というキーワードだ。名指しこそしていないが中国を念頭に発せられた言葉である。

経済的威圧と聞いて日本人が真っ先に想起するのは、おそらくレアアースだろう。尖閣諸島問題で対立した中国が、日本に対しレアアースの輸出を制限したとの報道は記憶に新しい。

しかし、実はこれ自体に少々誤解がある。中国がレアアースを制限したのは尖閣諸島問題が激化する1年以上も前のことで、当時は日本よりもヨーロッパにその衝撃が広がったのである。中国の動機は国内の業者の整理だったのだが、世界の企業に危機感を与えるのには十分なインパクトだった。

例を挙げれば中国はこの他にも経済的に威圧したと思われるケースはある。それらは輸出ではなく主に輸入の制限だった。思い浮かぶのはオーストラリアや韓国、フィリピン、リトアニア、台湾など。実際には20カ国・地域に対して行われたとされる。

もちろん、これ自体が褒められたことではない。しかし中国側にも言い分はある。多くのケースは制裁をかけられたのに対する制裁返しであり、純粋に政治問題を経済制裁で応じたと考えられるのはオーストラリアとリトアニアのケースだ。フィリピンや台湾からの青果物の輸入制限は、緩かった検査を突如に厳格化したという嫌がらせで、グレーだ。これは最近まで日本が韓国にやってきた輸出制限にも重なる。

韓国へ観光客を制限したのは、国民感情の部分もあるので、やはりグレーだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年5月21日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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