国家凋落の象徴。研究者の雇い止めが招く低学歴国ニッポンの汚名

 

ただし、ここでも問題になるのが、カネです。なんやかんやいっても大学は、一般企業以上にクローズドな世界です。

私自身、大学院で「ここは白い巨塔か!」という場面に幾度となく遭遇しました。大学で偉くなるには、政治力が不可欠。そういう力のある教授がいる研究室にはカネが集まるし、カネがあるところには人も集まります。

かたや、研究者としての業績を積み上げても政治力がなければ、教授の席すら手に入りません。そういった研究室の研究者は就職先を見つけるのも難しいというのが実態です。

こんな状況で、“科学技術立国”の復活などなせるわけがないし、人間の能力は、ニンジン=カネをぶら下げて走らせさえすれば、引き出されるほど単純でもありません。

なぜ、これまでノーベル賞を受賞した研究者たちが、日本は自由に研究ができない、研究する環境が整っていない、このままでは日本は沈没する、といった苦言を呈してきたのか?

はやりのものをやるための投資より、やりたいものができる投資にこそ未来があることを、世界が認める研究者たちは知っているからです。

今回取り上げた「研究者の雇い止め問題」は、個人の問題でもなければ、大学や研究機関の問題だけでもない。

国の学問に対する考え方の問題であり、国の凋落ぶりを示している。そして、結果的に博士課程に進学する学生の減少につながり、「低学歴国ニッポン」の汚名を与えて、日本の研究地盤を揺るがすという悪循環に陥っているのです。

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