二つ目は、私が自分の中では「老人Z」と呼んでいる日本のビジネスの再構築プランです(大友克洋原作のアニメのタイトルです)。
日本は、半導体、パソコン、スマホ、クラウドサービスなどで欧米に敗退し、最後の頼みの綱である自動車産業においても、EVシフトの波に乗り遅れて、大幅なシェアの損失は必然的な状況です。日本政府は巨額の税金を投じて、半導体産業の国内への呼び戻しを行おうとしていますが、それは半導体のサプライチェーンの確保のためであり、日本の国際競争力の強化には繋がりません。
ChatGPTの成功以来、「日本でもAIに投資すべきだ」という声が聞かれますが、今からそこに投資をしたところで、OpenAIやGoogleとまともに戦えるとは思えないし、オープンソースの波にも逆らえません。
そもそもAIも半導体も道具であり、ここから力を入れるべきなのは、AIや最新の半導体を活用したアプリケーションやサービスであり、そこに日本独自の競争力を持つ産業を育てるべきなのです。
産業はニーズのあるところに育つことを考えれば、注目すべきなのは、少子高齢化です。日本は、世界中で最も厳しい少子高齢化の波にさらされている国です。特にここ数年、出生数の減少率は加速しており、過去5年間の平均で、年に3.64%で減少しています。この勢いで減り続けると、2035年には出生数が50万人を切ることになります(政府の試算では2072年となっていますが、これは楽観的過ぎます)。このままでは、日本という国の存続すら危ぶまれる状況と言えます。
少子高齢化に伴う労働人口の減少は既に日本中でさまざまな歪みを生み出しています。老人介護の職場は常に人が不足しており、自分の親の介護のために仕事を辞めてしまう人たちすらいる状況です。高齢者ドライバーによる事故は後を絶たず、地方の交通インフラの崩壊とともに、老人たちの移動手段が失われる状況になっています。保育の場も常に人が不足しており、それを理由に子供を作らない女性が大勢います。
日本政府は、介護保険制度や子供手当でこれらの問題に対処していますが、単にお金をばら撒くだけでは根本的な解決にはなりません。お金を撒けば巻くだけ、そこにそのお金を当てにしたビジネスモデルが誕生するだけで、根本的な問題の解決にはならないし、何の価値も生み出しません。
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