深刻な建設業界の人手不足と日本に来ない外国人労働者
建設業界の深刻な人手不足は、物価高以上に問題である。少子高齢化により労働力人口が減少する日本では、様々な業界が人手不足に悩んでいる。特に、建設業は深刻である。
例えば、厚生労働省のデータによれば、建設業の「有効求人倍率」は、他業界より顕著に高い。有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)に申し込まれた求人数を求職者数で割った値である。有効求人倍率が5倍の場合、5社が求人を出して、1名の申し込みがあるということだ。有効求人倍率が高いほど人手不足が深刻ということである。
そして、建設業全体の有効求人倍率は、5.42倍、建設躯体工事の職業のみだと有効求人倍率が10.07倍である。介護サービス3.09倍、機械整備・修理4.33倍などに対して、顕著に高い。深刻な人手不足の現状を示している。
また、国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によれば、2020年における建設業の就業者数は492万人で、ピーク時の1997年の685万人と比べて約28%減少した。今後も、建設業の労働人口は減少すると予想されている。2025年には、約90万人不足すると予測されている。
建設業における人手不足の原因の1つは、労働人口の高齢化と若者の建設業離れがある。建設業に対する3K(きつい・汚い・危険)のイメージの広がりや、低賃金が労働時間に見合わないなどが原因となり、若者の建設業離れが起きている。
そして、若者の新規雇用が減ることで、現在働いている労働者が退職できず、労働者の高齢化が進むことになる。そして、高齢化によって、次世代へ技術継承できないことが懸念されている。
その一方で、大阪だけでも万博、IRなどが予定されるなど、建設業の需要は全国的に拡大している。そこで、建設業界で人材を確保するために、外国人労働者を受入れざるを得なくなっているのだ。
2019年、安倍政権時に、単純労働分野での外国人労働者の受け入れを認める「改正出入国管理法」が成立した。それまでは、医師、弁護士、教授など「高度専門人材」に外国人の就労資格を限定してきた。それを「非熟練の単純労働」に広げる、日本の入国管理政策の歴史的な大転換であった。
新たな在留資格「特定技能」は、2段階で設けられている。「特定技能1号」は、最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格する「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人が得られる資格である。滞在期間は通算5年で、家族は認められない。
「特定技能2号」は、さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与えられる資格である。1~3年ごとの期間更新が可能で、更新回数に制限がなく、配偶者や子どもなどの家族の帯同も認められる。10年の滞在で永住権の取得要件の1つを満たし、将来の永住に道が開ける。一方、受け入れ先機関が外国人労働者に日本人と同等以上の報酬を支払うなど、雇用契約で一定の基準を満たす必要があることも法案に明記されている。
この新制度導入で、外国人単純労働者は増加してはいる。だが、日本国内の人手不足は埋まっていない。日本政府は当初、この新制度で34万人の外国人単純労働者を受け入れる目標を立てた。だが、2023年2月時点で、1号は約14万6,000人、2号は10人にとどまっている。その理由は、国際的な観点からみると、外国の単純労働者にとって、日本は既に魅力ある働き場所ではないからだ。









