裁判所は虐待というのが、人の一生にかかわるひどい判決だとまったく理解していない。実際、3歳の男児に熱湯をかけ続けて、殺した親も傷害致死という判決だ。本来なら殺人より重い虐待殺人罪というのを設けるべきだ。この母親にしても、通常の刑でなくて、子どもにやったことと同じように飢え死に寸前まで食べさせない刑を課してほしいくらいだ。
虐待をもっと重罪にしないと悲劇はなくならない。その上、日本の場合は、虐待をする親に平気で子どもを返す。アメリカとはえらい違いだ。そして虐待をされた子どもが重罪を犯すとそれを喜んで大ニュースにする。ニュースのネタに困らないようにわざと虐待を見て見ぬふりをしているように思えてならない。
あと、周囲の人間も虐待に甘すぎる。
今回43回目の入院でやっと虐待が見つかったというが、普通、医療関係者なら不自然に思わないほうがおかしい。そのうち30回以上が同じ入院先だという。
外傷がなかったとはいえ、栄養失調が何度も続き、それなのに入院したらちゃんと食べて退院というのなら、親が食べさせていないことを疑わないほうがおかしい。
日本が治安がいいことを逆手に、虐待が放置されているとすれば、そうやって育った子は浮かばれない。
たとえば、複雑性PTSDのために仕事が続かなくても、生活保護を受けるにもバッシングを受ける。もちろん凶悪犯罪に走っても生い立ちは鑑みられることはなく、テレビ局の金儲けのネタにされる。その上、虐待親の罪は軽い。
子どもを大事にするが聞いてあきれる恐ろしい国だ。
※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年7月22日号の一部抜粋です。
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