「殺せるなら殺してみろと夫に刃物を握らされたので切ってしまった」
当時、種雄さんと妻のX子さん(現・木原官房副長官夫人)は夫婦仲が悪く、X子さんは子供を連れて家出した。種雄さんは2か月近く探し回ったあげく、当時X子さんと親密だったY氏の地元にいることを突きとめ、父親から借りた車でX子さんと子供たちを連れ戻したが、その直後に謎の死を遂げた。
のちに父親が捜査員から聞いた話では、狭い廊下をへだてた隣の寝室にX子さんと子供たちがいたというが、種雄さん1人しかいないと父親は思い込んでいた。
父親は家の外に出て電柱の住居表示を確認し110番通報した。家に戻る途中、風呂敷に包んだ長い棒のような物を背中に抱え、ふらつきながら歩いてきた男とすれ違った。後を追いかけたが、見失った。警察が到着し、種雄さん宅のドアを開けた時、玄関に置いてあった靴の数が減っているような気がしたという。
おそらく父親は、その男が種雄さん宅から出てきたのではないかと疑っているに違いない。父親が居間で種雄さんを見つけたとき、家の中にはX子さんと子供2人だけではなく、その男もいて、父親が外に出たわずかな隙をついて抜け出したのではないかと。
その男が誰であるかはわからない。ただ、週刊文春7月13日号の記事によると、X子さんと親密な関係だったY氏が事件当日、自家用車で種雄さん宅方面に向かっていたことがNシステムの捜査で判明し、警察が再捜査で事情聴取した結果、Y氏から次のような供述を得ている。
Y氏が安田さん宅に行くと、種雄さんが血まみれで倒れており、X子さんは「夫婦げんかになって、殺せるなら殺してみろと夫に刃物を握らされたので切ってしまった」とワケを話した。
種雄さんの体内から致死量の覚せい剤が検出されたこともあり、当初は自殺とみていた警視庁はY氏のこの供述により他殺の可能性が高まったとして18年10月、木原誠二氏の自宅を家宅捜索し、重要参考人としてX子さんから事情聴取した経緯がある。
父親は「種雄の傷は、のど元から肺ににまで達していた。自分をそんなふうに刺して、足元にナイフをきちんと置いてから死ぬなどということがありうるだろうか」と言い、再捜査を途中で打ち切って、当初判断の通り自殺として片づけた警察に疑問を投げかける。
種雄さんはX子さんと子供たちを自宅に連れ帰り、離婚届に判を押した。それから間もなく、亡くなった。父が駆けつけた当時、電灯は消され、玄関ドアの鍵はかかっていなかった。自殺なら、室内を真っ暗にするだろうか。真夜中に鍵をしていないのは誰かを迎え入れるためではないのか。数々の謎がある。
X子さんとは事件後、一度も顔を合わせたことがない。種雄さんの遺体をX子さんは引き取らず、電話をかけてきただけだった。その時、「葬式に孫連れてきて線香一本でも」と種雄さんの母が言うと、電話を切られたという。
X子さんは、種雄さんと死別した後、銀座の高級クラブで働いていたが08年、財務官僚から衆議院議員に転身して間もない木原氏と出会い、14年に女児を出産し、結婚した。
2018年春になって、警察が再捜査をはじめた。同年10月、木原氏の自宅を家宅捜索したが、X子さんはY氏に連絡したことを否定し「事件には関与していません」「記憶にありません」「わかりません」と繰り返した。その後まもなく、警視庁は捜査を打ち切った。
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