楽天モバイルで新たなビジネスモデルを構築した「立役者」であった、共同CEOのタレック・アミン氏が突然退任しました。一体、楽天モバイル内で何が起きているのでしょうか? 今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、業界内では不穏な噂があったというタレック・アミン氏の評判を紹介しながら、氏の電撃退任についてあまりにも素っ気ない態度を取る三木谷会長を疑問視しています。
楽天モバイル共同CEOだったタレック・アミン氏、突然の退 任。なぜ三木谷浩史氏はタレック氏に「素っ気ない」なのか?
8月7日、楽天モバイルと楽天シンフォニーは新執行体制を発表した。これまで技術面を担当し、楽天モバイルでは代表取締役共同CEO、楽天シンフォニーのCEO、楽天グループの副社長であったタレック・アミン氏が突如、退任することに伴うものだ。タレック氏のLinkedinによれば「子どもの教育に注力したい」というのが退任の理由だという。
「自己都合」と言われれば、どうしようもないが、とはいえ、あまりに突然のタイミングでちょっと首をかしげたくなる。「子どもの教育のため」という自己都合であれば、キリの良いタイミングで退任というのもできたはずだ。
しかも、8月2日からパシフィコ横浜で開催されたイベント「Rakuten Optimism」では当初、タレック・アミン氏の登壇がアナウンスされていた。それが数日前に登壇者が変更となり、当日も「一部、プログラムで登壇者が変更になっています」とアナウンスがあっただけだった。あまりに突然の退任劇だったことがわかる。
8月10日に開催された楽天グループの決算会見において、新執行体制については、三木谷浩史会長ではなく、別の幹部が説明を行っていた。質疑応答で聞かれた際に三木谷会長から「本当に個人的な理由ということなので、我々としては仕方がない。そのなかで、ゼロから1をつくる人と、1を100にする能力は、別だと思う。ある意味オペレーションに近いシャラッドがテイクオーバーするというのは、実務的に言うとむしろポジティブだととらえている」としたのだ。
2018年のMWCでタレック・アミン氏と会い、楽天モバイルに招集。完全仮想化と、それをベースにした楽天シンフォニーという、既存3社にはないビジネスモデルを構築したという立役者の退任としてはあまりに素っ気ないコメントであった。もうちょっと、(嘘でもいいから)感謝の意を伝える場面があっても良かったのではないか。
ただ、楽天モバイルに関しては、初代社長が別の会社に行ってしまったり、MVNOのころからマーケティングを見ていた人がMNO参入とともに居なくなってしまったり、ASTと組んで衛星通信をやっているはずなのに、技術系の人がStarlinkに転職してしまったりと、端から見ていると人の流出が激しかったりするのが気になるところだ。
とはいえ、タレック・アミン氏に関しては、業界内部では就任当初から不穏な噂が出ていた。また「そもそも、楽天モバイルに骨を埋める気はないでしょ」と見られており、次へのステップとして楽天モバイルが踏み台に利用されている雰囲気は感じられた。
「三木谷さん、騙されていないといいけど」と心配している人もいたほどだ。タレック氏が遅かれ速かれ退任するのは目に見えていたのは間違いないだけに、楽天モバイルとしては新たに共同CEO兼CTOになったシャラッド・スリオアストーア氏が辞めなければ、当面、大丈夫なのではないだろうか。
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image by: Guillaume Paumier, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons









