これまで人道的見地から、不法移民に対して寛容な姿勢を示してきたアメリカ民主党。そんな同党が今、不法移民問題で分裂の危機に見舞われているといいます。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、米有力紙が伝えた民主党の現状を伝える記事を紹介。さらに日本メディアに対しては、こうしたアメリカの政治意識の潮流をしっかり報じるべきとの注文をつけています。
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不法移民への対応で分裂する米民主党を海外はどう報じているのか?
今週は不法移民への対応で米国の民主党が分裂し始めているという報道です。
共和党はまとまっています。トランプが起訴されたりしてマスコミの集中砲火を受けていますが、「国境の重要性」という大義を疑う共和党員はいないからです。
逆にバイデン大統領の民主党は分裂を始めています。
ニューヨーク・タイムズが2023年9月8日に長文で報道しているので要約してご紹介しましょう。
1年前、テキサス州のアボット知事は、不法移民や亡命希望者をニューヨーク、ワシントン、シカゴらに送り込み始めた。
その不法移民の波は聖域都市をますます緊張させ地域社会は疲弊している。
そして国境危機は、今や民主党を分裂させている。
ニューヨークのアダムス市長(民主党)は今週、「連邦政府の救済措置と国境での取り締まりがなければ、急増する移民がニューヨークを破壊する」と宣言した。
シカゴのジョンソン市長(民主党)は先月、ホワイトハウスに「はっきり言って、シカゴ市は支援と移民政策の変更なしには、新しい到着者を安全に迎え入れることはできません」と嘆願した。
また民主党議員であるマサチューセッツ州のヒーリー知事は、非常事態を宣言し、州兵を出動させ、ホワイトハウスに助けを求め始めた。
今、突然、一部の民主党議員の声が共和党議員のように聞こえるようになった。
かつては不法移民に寛容だった民主党議員が不本意ながら共和党に加わってバイデン大統領に砲火を浴びせている。
解説
米国北部に位置する民主党系の都市や州の首長が不法移民の流入に悲鳴をあげており、バイデン大統領に何とかしろと訴えている状況です。
「そんなに不法移民を保護したいのなら送り込んでやる。自分たちでこの問題を経験してみろ」と不法移民をバスや飛行機で送り込んだフロリダ州とテキサス州の知事の意図が当たった形です。
ところが、声を上げ始めた一部の民主党議員の中にもさらに意見の相違があります。
ある人は「国境管理をしっかりしろ」と言い、別の人は「不法移民に早く労働許可を与えろ」と言っているのです。
この2つの政策は全く違います。
国境管理をしっかりするという主張は、基本的に共和党(トランプ)と同じ政策です。
ところが、不法移民に早く労働許可を与えろという主張は、不法移民を保護する政策であり、さらに流入を加速する結果になります。
不法移民対策を主張し始めた民主党議員の中に全く方向性の違う人が混在しているのです。
なぜでしょうか?
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