9月13日、ロシア極東の宇宙基地で2019年以来の会談に臨んだプーチン大統領と金正恩総書記。前回は金総書記を明らかに格下扱いしたと伝えられるプーチン氏が一転、この会談では終始笑顔を絶やさぬ歓待ぶりを見せました。その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、プーチン氏が金総書記を迎えた目的を解説。併せてロシアが北朝鮮の金体制を守る理由についても詳説しています。
プーチンが金正恩に会った目的は?
プーチンと金正恩が会談しました。『読売新聞オンライン』9月14日付。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は13日、露極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で会談した。
今日は、ロシアと北朝鮮の関係について考えてみましょう。
なぜプーチンは北朝鮮を守るのか?
金正恩が大暴れしはじめたのは2017年でした。核実験、ミサイル実験を繰り返し、たくさんの制裁を科されました。
その当時、「ロシアも中国も北朝鮮の核兵器保有には反対。ロシアも中国も困っている」などと言われていました。
しかし、私は、「北朝鮮はロシアにとって緩衝国家。北の核がロシアに向くことはないので、プーチンは金体制を保護する」と書いてきました。たとえば『現代ビジネス』2017年7月22日付から引用してみましょう。
「緩衝国家」としての北朝鮮
さて、これまで西側を見てきたが、にわかに緊張を増す東側に目をむけてみよう。
先述の通り、プーチンは、「米国は侵略政策を続けている」と考えている。そういう視点に立ってみると、日本のMDも、韓国のTHAADも全部、「対ロシア」に見えてしまうのだ。
ちなみにプーチンは、北方領土を日本に返せない理由の一つとして、「返還すれば、そこに米軍がやって来るから」としている。
そんな視点で北朝鮮を見ると、この国がロシアにとって、「米国の侵略を防ぐための重要な『緩衝国家』」になっていることがわかる。
確かにロシアは、「北朝鮮の核保有」には反対している。しかし、その反対の切実度は、日本、米国、韓国とは、比較にならないほど「軽い」ものだ。
なぜか?北朝鮮がロシアを核攻撃することなどありえないからだ。
それではなぜ、ロシアは北の「核保有」に反対するのか?
もちろん、「核保有国グループの『寡占状態』を維持したい」とい意識もあるだろう(核拡散防止条約(NPT)によると、米国、英国、フランス、ロシア、中国が核兵器を保有するのは「合法」だが、その他の国は保有を「禁止」されている)。