世界中で問題となっている「アルコール依存症」の問題。自助グループへの参加が最も有効であることが知られていますが、では「薬物療法」で有効な方法はあるのでしょうか? 今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、海外の研究で「比較的有効」であるとの結果が出た薬物療法の方法を伝えています。
アルコール依存症に対する薬物療法で比較的有効な方法は何か?
アルコール使用障害(アルコール依存症)に対する薬物療法の効果は限定的と言われており、併存する精神状態の悪化に対して薬物療法が行われる場合にも、自助グループへの参加等、非薬物療法の併用がすすめられます。
今回は、アルコール使用障害に対する、薬物療法で比較的有効な方法は何かを調べた分析結果(メタ・アナリシス)をご紹介します。
Pharmacotherapy for Alcohol Use Disorder
A Systematic Review and Meta-Analysis
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2811435
アルコール使用障害に対する薬物療法(システマティック・レビューとメタ・アナリシス)
アルコール使用障害に対する薬物療法を内容として含んだ118の臨床試験(20,976人の参加者)が分析に含まれました。
結果として、以下の内容が示されました。
- アルコール使用障害に対して、比較的有効だったのはアカンプロサート(商品名:レグテクト)とナルトレキソン50mg/日(内服)でした。
- ナルトレキソン5mg/日(内服)は偽薬と比較して重度の飲酒に戻りにくく、注射剤の同薬は治療期間内の過剰な飲酒日を減少させていました。
- 副作用としては、アカンプロサートで消化器症状(下痢が中心)、ナルトレキソンで嘔吐の報告が多くなっていました。
要約:『アルコール使用障害に対する薬物療法としてはアカンプロサートとナルトレキソンが有効である可能性がある』
アルコール使用障害に関しては、自助グループへの参加が最もすすめられる点は変わりませんが、飲酒欲求を軽減する選択肢として薬物療法も検討されるべきかもしれません。
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