ロッキード事件やリクルート事件を超える大疑獄となるのか。自民党の「清和政策研究会」(安倍派)による政治資金パーティー収入の裏金化疑惑を捜査する東京地検特捜部は、安倍派側を政治資金規正法違反容疑で強制捜査、キックバックを裏金化していた疑惑がもたれる議員側については一斉聴取に乗り出す方針を固めた模様だ。読売新聞によると、安倍派の収支報告書への不記載総額は10億円超となる可能性もあるという。
安倍派を強制捜査へ、収支報告書への不記載総額10億円超か…宮沢博行氏「派閥から指示あった」https://t.co/MTjBHPsFS4#ニュース
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) December 13, 2023
これまでさまざまな疑惑が浮上するも、検察が踏み込むことのできなかった与党・自民党。それだけに今回「安倍派」へ捜査のメスが入った事実は、多くの国民に衝撃をもたらしている。
そんな中、最近ネット上で特に増加しているのが、安倍晋三元首相を射殺した山上徹也容疑者を「評価」する声だ。銃撃事件が起きた昨年は、旧統一教会や宗教2世問題が世間に認知されるきっかけを作ったとして「称賛」の声が少なからず上がっていた山上容疑者。そして「安倍派」パー券ウラ金疑惑に注目が集まる今、再び「評価」が高まっている様子なのだ。一部の文化人からは「テロリストの擁護に繋がりかねない」と警戒する声も出てはいるが、「評価」の声が消える気配はない。
防衛副大臣が安倍派からの箝口令を暴露
朝日新聞が12月1日付の朝刊で報じて以来、大きく世間を騒がせ、そして永田町を震撼させ続けている「安倍派」パー券ウラ金疑惑。事態を重く見た岸田首相は閣僚、副大臣、政務官の政務三役からの安倍派一掃を試みるも同派の激しい抵抗に遭い、官僚と副大臣のみ計9名を事実上の更迭とした。辞表提出という形で更迭された閣僚は、それぞれ派閥から1,000万円超、数百万円を受け取っていたとされる松野博一官房長官と西村康稔経済産業相、ともにウラ金疑惑を否定している鈴木淳司総務相と宮下一郎農林水産相。
キックバック分の政治資金収支報告書への不記載を派閥からの指示と発言し、初めて安倍派による組織的なウラ金作りへの指示を認め、さらにこの疑惑についての派閥からの箝口令を暴露した宮澤博行防衛副大臣も14日、辞表を提出した。
本日、副大臣の辞表を提出いたしました。これまでのご支援に心から感謝申し上げます。また、昨日の私の安倍派資金に関する発言について、多くの皆さまから励ましのお言葉を頂き、大変勇気付けられました。今後、一から出直すつもりで精進いたします。よろしくお願いします。#宮沢ひろゆき #宮澤博行 pic.twitter.com/nsl5Mwghav
— 宮澤博行 (@miyazawa0110) December 14, 2023
また、これまでいかなる疑惑にも強気の態度を貫いてきた萩生田光一政務調査会長、世耕弘成参議院幹事長、高木毅国会対策委員長も、次々とリークされる具体的な情報に危機感を抱いたためか、それぞれその職を自ら辞した。彼らも1,000万円程度のキックバックを受けていたと伝えられている。
巨大匿名掲示板で上がる山上容疑者を「評価」する声
このような状況の中、22年7月に応援演説中だった「安倍派」をまとめる安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者の行為を「評価」する声が聞かれるようになってきている。Googleの検索窓に「山上徹也」と入力すれば検索候補には「凄い よくやった」の文字、リアルタイム検索のサジェストは「正しかった 救世主 国民栄誉賞 革命…」といった具合だ。山上容疑者に対しては昨年来、全国の「ファン」から多くの差し入れや手紙、はては現金までもが送られてきている事はよく知られている。そんな空気が一般人にも広がり始めているというのだ。
現金は数百万円に上る…山上徹也被告のもとに全国の「ファン」から差し入れが殺到 : https://t.co/1B5vgbYHSK #現代ビジネス
— 現代ビジネス (@gendai_biz) January 17, 2023
巨大匿名掲示板の5ch(旧2ちゃんねる)では、先の読売新聞の記事をソースにしたスレッド内で「山上」と検索すると、以下のようなコメントがヒットする。
山上さんのお陰で大疑獄事件になりそうやんけ
山上さんは独りで明治維新に匹敵する大事業をやってしまった
山上神社建立待った無し
献金やパー券の金全部没収して山上様に献上するべきだと思う
もう山上は無罪でいいだろ
山上の放った一発の銃弾は一体どこまで悪事を暴くのか
山上の犯行がなかったら絶対に明るみにされなかった件
これで山上さんが正しかった事がまた一つ裏付けされたな
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さらに最近は攻撃的なコメントが上がっていないはずのYahoo!ニュースのコメント欄にも、「人の死を改善、回復のチャンスだなんて言ってはいけないが、安倍晋三さんの死があったればこそ、今回の悪辣な所業は明らかになった」「この国には安倍同様、地獄送りにされるべき悪人が多すぎる。ヤマガミサマに殺されるよ?」などといったコメントが散見される始末だ。
山上容疑者を「評価」する流れに異を唱える人々
どのような人物であれ、またいかなる理由があろうとも殺人は決して許される行いではない。しかし、山上容疑者による安倍元首相殺害がきっかけとなって、旧統一教会問題が進展し、パー券ウラ金疑惑に捜査のメスが入ったことは紛れもない事実だ。殺人を擁護するしないの問題ではなく、山上容疑者の行為があくまでそのきっかけになったという事実は厳然として存在する。言葉に出すのは憚られるが、内心そのように考えている人間は決して少なくないのではないか。
しかし、そんな山上容疑者を「評価」する流れに異を唱える文化人やタレントが複数存在することもまた事実だ。某国際政治評論家や自称ジャーナリスト、某お笑い芸人などが、昨夏よりテレビで「テロリストの狙い通りになって良いのか」という言葉をしきりに繰り返しているのを耳にした向きも多いだろう。
その一方で、こんな暴露もある。アサ芸プラスは9日、政府の官房機密費を使った「文化人工作費」が、複数の文化人に直接手渡されていたことを関係者が暴露する記事を公開した。もっとも高いランクには1,200万円もの現金が贈られていたというのだから、山上容疑者を称賛する声を牽制するなど朝飯前だろう。彼らの他にも自民党や政府に都合の良い言動を繰り返す面々に「文化人工作費」がばらまかれていた可能性は高い。何せ手渡しのため税金もかかることがない“ウラ金”なのだから配り放題だ。
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テレビの報道番組制作に関わってきた男性は、昨今のネット上における「山上評価」について次のように語る。
「山上容疑者の行為は絶対に許されるものではないことは言わずもがなですが、彼を評価する声が上がるのはそれだけ日本社会が閉塞感に覆われていたということが言えると考えてしまいます。地上波では決して放送できませんが、そういう声があるということは制作現場は把握しているはずです」
文化人工作費についてはどう見るのか。
「私はまったく知りませんでしたが、スクープ記事を読んで『十分ありうる話だな』と思ってしまいました。カネで動く人間はカネに転ぶとも言いますから、お金さえあれば誰でも“受け取っていそうなあの人”も味方につけられるということですよね」
昨年ネット上でよく語られている、自民党と統一教会(世界平和統一家庭連合)のロゴマークとのあまりの相似を指摘する「陰謀論」めいた話題。今にして思えば、あながち「単なる与太話」とも言い切れない。令和が始まったのが5月1日、旧統一教会の創立記念日も5月1日と奇妙な一致を見せているのは偶然なのだろうか。一般人がそんなことにまで気をかけるようになってしまったのは、安倍晋三元首相の銃撃事件があったからと言っても過言ではない。
年末から年始にかけて、東京地検特捜部の捜査は大詰めを迎える。独房の山上容疑者はこれら一連の報道を、どんな思いで見つめているのだろうか。
「生きていくかぎり悩み続けなければいけない問題」とのポストも