恐ろしい「プーチンの野望」は実現化するのか?2024年ロシア大統領選後の世界

2024.01.04
 

トランプの再選が引き裂くアメリカと西欧諸国の関係

そして、既に上述したが、欧米諸国の支援疲れである。特に、プーチンは米国の行方を注視している。米国議会ではウクライナ支援について共和党から厳しい反対の意見が拡大し、米国民の間でもウクライナ支援の有効性が見えないと批判の声が上がり、支援継続を求めるバイデン政権は苦しい立場にある。

バイデン大統領は秋に選挙を抱えているので、米国は今後内向き化していくことを余儀なくされ、ウクライナ問題への関心はいっそう薄まるだろう。しかも、大統領選の相手はトランプであり、トランプが大統領に返り咲けばウクライナ支援は停止される可能性が高い。米国の支援打ち切りとなれば、米国と支援を継続してきた西欧諸国との間に大きな溝が生じるばかりか、ロシアと距離が近い東欧諸国の対米不信が増すとともに、ロシアの軍事的士気を一気に高めることは避けられない。

プーチンはそのシナリオを強く望んでいる。トランプが大統領になれば、侵攻を拡大しても対露制裁が強化されるかは不透明で、諸外国のロシア非難も限定的だと先を予測し、戦略的に動いている。おそらく、トランプが勝利すればプーチンは真っ先に祝福メッセージを送り、トランプとの関係強化に乗り出すことだろう。第1次トランプ政権時、プーチンとの関係はそれほど悪いものではなかった。

こういった有利な環境を自認する中、プーチンは3月に大統領選挙に臨む。選挙といっても対立候補者はおらず、2030年までのプーチン政権を承認するイベントに過ぎないが、ここで政治的なお墨付きを得れば、プーチンは今後6年という期間の中でウクライナ政策をどう展開していくかを具体的に考えることになる。3月の大統領選が、プーチンの野望を実現化していく好機になることが強く懸念される。

image by: Asatur Yesayants / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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