単なる惰性でそのまま残置されていた「タワー22」
そもそもこの在ヨルダン・イラク・シリアなどの米軍基地のほとんどは過去の作戦がすでに終わったか、ほとんど終わりつつあるのに、単なる惰性でそのまま残置されているものが多い。
タワー22の場合は、ISISがイラクとシリアの国境近くにミニ・イスラム国家を樹立宣言したことに対応する対テロ作戦の一環として設けられた。しかしトランプ政権時代に米軍特殊作戦を強化して初代から第3代に至る指導者を殺害し、さらに第4代も昨年4月にトルコの情報機関によってシリア国内で殺害されたため、すでにミニ国家は壊滅し、少数の残党がイエメン、インド、パキスタン、アフガニスタンに拡散・潜伏しているだけと見られている。
従って、ヨルダンとシリア・イラクとの国境近くに米軍が基地を構えている必要はほとんどなくなり、中東におけるISISの残党狩りの必要があるならシリア、イラク、イラン、トルコなどの現地の軍・情報機関に任せ、米国自らは離散したイスラム戦士のごく少数の集団が米本土などでのテロを実行する可能性を警戒しなければならないハズである。
しかし、中東地域を分担する中央軍司令部は「ISISの復活の兆しが強まっている」といった情勢分析を上げ、同地域でのプレゼンスを弱めることに抵抗してきた。そこには、一度戦争をやって血で贖って地歩を占めた所は「俺のものだと捉える感覚(the sence of ownership)」が働いていると、上掲「責任ある国政」サイトで安全保障専門家のポール・ピラーが指摘している。そういえば、米軍が沖縄占領から75年も経つのに未だに基地を手放さないどころか新基地の建設まで求めるというのも、その「俺のものだと捉える感覚」の故なのだろう。
バイデンが招いた米兵3名の「不幸な無駄死に」
バイデン大統領は実は、そのような軍部の根深い抵抗心理を押し切って、過去の惰性で中東各地に置いていた基地がガザ戦争以来、イスラム勢力からの格好の攻撃対象となりつつある現状に困惑し、出来れば米兵の犠牲が出ないうちに基地の縮減を始めるべく、シリアおよびイラクとの協議をはじめていた。
その矢先に起きた3人の兵士の死は、バイデンが中途半端にイスラエルの虐殺を支持しながら中東への軍事的関与の抜本的な見直しをずるずるモタモタと引き延ばしてきた中で起きてしまった不幸な無駄死にで、これによって米軍の脱中東が加速されることになるだろうし、また次期大統領に「全米軍基地の撤収」を主張するロバート・ケネディJrが当選すればもちろん、トランプが再選した場合も少なくとも中東地域からの米軍撤退は確実に起きるだろう。
他方、米バイデン政権はすでに「台湾有事切迫論」を口にしなくなり、むしろ経済界主流の要求に従って中国との通商関係の修復に力を入れ出している。いずれ東アジアにおいても過剰な米軍プレゼンスを見直す流れが生じよう。
そのようなグローバルな流れの中で、旧態依然の対米盲従に陥っている自民党政権はその頃誰が率いているにせよ、相変わらず米軍が沖縄はじめ日本から撤退しないよう哀願し続けるのだろうか。
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