ゲームは振り出しに戻った。米中の「共存関係」を破壊する“トランプ再登板”

Raleigh,,Nc/united,States-,10/27/2020:,A,Pile,Of,Political,Mailers,On
 

就任当初は習近平国家主席を「専制主義者」と呼び、対中強硬姿勢を鮮明にしていたバイデン大統領。しかし任期も終盤となった今、対立ではなく「共存」という極めて合理的な判断を選択し、両国関係は一定の安定を見せています。バイデン政権の「路線変更」の裏には何があったのでしょうか、今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、米大統領補佐官の発言を引きつつその理由を解説。さらに現在の中国における「最大の懸念事項」を記しています。

バイデン政権「中国との共存」という合理的な判断と米中関係を振り出しに戻すトランプの再選

一昨年11月のバリ島、そして昨年末の米カリフォルニアでのジョー・バイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談を経て、米中関係は一定の落ち着きを取り戻したようにも見える。

その意味では今年1月30日、米ワシントンの外交問題評議会におけるジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)の発言は示唆的である。

サリバンは中国との間に存在する利害対立や摩擦、その対処と成果に触れた後、「しかしアメリカと中国は経済的な相互依存関係にあり、国境を越えた問題にも対処し、紛争のリスクを軽減するということにも関心を共有している」と述べ、こう続けた。

「数十年にわたり、中国を変えようとする努力は、暗示的であれ明示的であれ、成功しなかった。中国は当分の間、世界の舞台における主要なプレーヤーであり続けるだろう。つまり、私たちは競争しながらも、互いに共存していく方法を見つけなければならない」

ここでいう「変えようする努力」が何を意味するのかは、はっきりとしないが、素直に考えれば「アメリカの思い通りに変わらない中国」ともうまく付き合ってゆかなければならないという意味だ。

ファーウェイの復活で脆くも崩れたバイデン政権の思惑

実際、中国のハイテク産業の発展を半導体技術を制限することで抑え込もうとしたバイデン政権の思惑は、必ずしも奏功したとは言えない。

象徴的なのは華為科技(ファーウェイ)の復活である。ファーウェイがアメリカ政府の制裁強化により、およそ2年間にわたり5G用の半導体を調達できなかったことはよく知られている。

しかし昨年8月末、アメリカのジーナ・レモンド米商務長官が訪中するさなか、同社は新型スマホ「Mate 60シリーズ」の販売予約を開始して大きな話題をさらった。新製品にはファーウェイが独自に開発した7ナノメートルの半導体が使われていることも判明。バイデン政権にはさらなる衝撃となった。

そのファーウェイは中国のスマートフォンのハイエンド市場で「再び王者に返り咲く勢いだ」という。年明けから中国メディアが一斉に報じている。

2月9日に配信された「財新」中国Biz&Techは、記事中で専門家のコメントを引用し、ファーウェイ効果で「2023年後半から市況底打ちのサインが現われた」(市場調査会社IDC)と報じたほどだ。

ファーウェイの2023年10~12月期の市場シェアは「前年同期の9.5%から15.2%に上昇。それに対し、同四半期のアップルのシェアは前年同期の23.7%から20.2%に低下した」という。

さらに世界を仰天させたファーウェイの「快挙」

アメリカの制裁を跳ねのけたファーウェイの強さが際立つストーリーだが、さらに世界を驚かせたのは、7ナノメートルに続き5ナノメートルの半導体もファーウェイが独自開発し量産体制に入ったというニュースだ。

韓国の『中央日報/中央日報日本語版』は英紙『フィナンシャル・タイムズ』の報道を受け、「中国、米国の制裁にも早ければ年内に次世代5ナノチップ生産か」(2月7日付)というタイトルで記事を配信している。

問題の半導体は上海に新たに建設される工場で量産されるという。同社の技術が長足の進歩を遂げ続けていることは間違いない。アメリカからの制裁で窮地に陥りながらも決して守りに入ることなく、研究開発への投資を拡大させてきた経営姿勢が奏功したとも報じられている。

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