ゲームは振り出しに戻った。米中の「共存関係」を破壊する“トランプ再登板”

 

イーロン・マスクも脱帽した中国自動車メーカーの競争力

貪欲な研究開発と業容拡大の成果の一つがEV業界への進出だ。中国の自動車産業は、EVがけん引する形で昨年大きな躍進を遂げた業界である。

昨年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となったのに続き、10~12月には、EVの販売台数で中国最大手の比亜迪(BYD)が初めて米テスラを上回った。

そのテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は1月24日、決算説明会で「中国の自動車メーカーは(世界で)最も競争力がある。(中略)貿易障壁がなければ、中国の自動車メーカーは世界の同業のほとんどを打ち負かすだろう」と述べた。

経済を舞台とした米中の対立は今後も激しい鍔競り合いが続くだろう。それに対し圧力一辺倒で向き合っても、かえって中国企業を強くしてしまうことは明らかだ。

その意味でもサリバンの語った「共存」は合理的な判断だろう。しかし、それはあくまでバイデン政権がたどり着いた一つの結論に過ぎない。

「トランプ再選」という習近平の最大の懸念事項

今後、大統領選挙が熱を帯びれば対中強硬の空気が強まることは避けられない。また民主党と共和党の対立が深まる議会では、唯一意見がまとまるのが対中強硬策でであり、中国への風当たりは強まる一方だ。

だが、そんななかでも中国の最大の懸念はやはりドナルド・トランプ前大統領だ。トランプの再登板ともなれば、米中関係はまた振出しに戻ると考えられるからだ。

今月8日には、そのトランプをめぐり米連邦最高裁が開いた口頭弁論が話題となった。問われたのは11月に予定される米大統領選でトランプに立候補の資格があるのか否か。

各州でトランプの資格はく奪を求める訴えが起こされ、いくつかの州でそうした判決も出されていた。宣誓をして公務に就いた者が反乱罪に問われた場合、立候補の資格を失うという憲法修正第14条第3項の解釈などをめぐる判断が当初の焦点だとされたが、最高裁ではそれとは異なる弁論が展開された。

判事たちはそろってトランプの立候補資格のはく奪に慎重な見方を示したのだ――(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年2月11日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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