アメリカファーストを誇示するトランプの対日圧力
そして、この関係でもう1つ懸念されるのがトランプ氏の対日圧力だ。トランプ氏は2月、日本製鉄によるUSスチールの買収計画で、「それを絶対に阻止する」と釘を刺す発言をした。最近、日本製鉄や積水ハウス、カゴメなど日本企業が米国企業を巨額で買収する動きが活発化しているが、昨年発表された日本企業による米企業のM&Aの件数は前年比で約2割増、金額は約3倍に膨らんでおり、今後更にこういった動きが進む可能性が指摘されている。
しかし、米国の経済や雇用を断固として守るとのアメリカファーストを誇示するトランプ氏からすれば、これは一種の侵略行為と映るだろう。上述のように、トランプ氏は中国製品に60%の関税を課すと発言したが、同時にその他の国々からの輸入品にも10%の関税引き上げも検討しているという。10%の関税引き上げは日本を特定したものではないが、日本企業による米国企業の買収がトランプ氏の目に止まることになれば、日本を特定した経済圧力を仕掛けてくることも考えられる。
第1次政権では、当時の安倍総理がトランプ氏と良好な関係を築いてきたので、我々はトランプリスクに直面することを免れた。だが、それは安倍総理がトランプ氏と個人的な信頼関係を構築できたからであり、第2次政権で日本がトランプ氏と良好な関係を作れるかは全くの未知数だ。米中の間で再び貿易戦争が勃発し、トランプ氏が日本に対して対中貿易規制で同調を呼び掛ける中、日本が十分な協力をしなかった場合、日本製品に対する関税引き上げを行うなどの圧力を掛けてくる可能性も排除できない。日本の経済界や企業はこの可能性を今のうちから検討しておくべきだろう。
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