北斎を楽しむ
美術館に行って葛飾北斎の絵を見るよりも、この本を読みながら「富嶽三十六景」や「八方睨み鳳凰図」を検索して鑑賞してみることをお勧めします。
例えば,富嶽三十六景と共に描かれた神奈川沖浪裏には、三隻の船が描かれています。北斎は「風を描く」つまり風景の一瞬一瞬を捉えながら絵を描いていました。
神奈川沖浪裏の船も実は一隻の船をコマ送りで描いていたのです。そんな解説がうれしいのです。
お栄(葛飾応為)の出自や北斎死後のお栄の足取りがよくわからないところも、お栄の「吉原格子先之図」や「夜桜美人図」を怪しく輝かせてくれます。
北斎とお栄を身近に感じさせてくれる小説ということで★4つとしました。
車さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・子どもたちにとって、今はまだ、お絵かきは遊びだ。だがこれを生業にしてしまうと、つまらなくなったり、限界を感じたりして、苦しみ、もがく日が必ずやってくる(p191)
・シーボルトは日本地図を自国に持ち帰ろうとしたのを見つかり、国外追放・・没収された品々の中に、北斎が注文を受けて描いた物を混じっていた(p202)
著者経歴
車 浮代(くるま うきよ)・・・時代小説家/江戸料理文化研究所代表。江戸風キッチンスタジオを運営。故・新藤兼人監督に師事しシナリオを学ぶ。第18回大伴昌司賞大賞受賞。著書は『蔦重の教え』(双葉文庫)、『落語怪談えんま寄席』(実業之日本社文庫)、『春画入門』(文春新書)、『天涯の海酢屋三代の物語』(潮文庫)、『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)など20冊以上。国際浮世絵学会会員。
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