漫画家も廃業危機に?6割超の国民が「経済的ゆとりと見通しが持てない」と答えた内閣府「世論調査」の逆ばかりを打つ岸田内閣の無見識

 

インボイスで漫画家までをもいじめ抜く自民党政権

あたしはブライダル専門のヘアメイクですが、フリーランスなので、複数の事務所やプランナーや式場や撮影スタジオなどから仕事を回してもらっており、仕事に必要な化粧品や道具などはすべて自前です。そして、それらはもれなく原材料費の高騰により、新型コロナ前より価格が2割前後も引き上げられています。しかし、その分を賃金に上乗せなどしたら、ソッコーで仕事が回って来なくなるため、口が裂けても「来月から単価を10%引き上げます」などとは言えません。結局、物価高騰による実質賃金のマイナスは、自分でかぶるしかないのです。

これはあたしのような仕事に限ったことではなく、作家でも漫画家でもフリーランスはみんな同じです。自民党政権はインボイスなどで「フリーランスいじめ」に終始していますが、大人気の売れっ子作家でもない限り、自分の担当編集者に「物価高で取材費が増額したので来月から原稿料を上げてもらえませんか?」などと言える人はいないでしょう。そして、これと同じなのが、大企業の下請けとなっている中小企業や、孫請けとなっている零細企業なのです。

岸田文雄首相は3月22日、日本商工会議所の総会に出席して「今年の春闘労使交渉では昨年を上回る力強い賃上げの流れができつつある。この流れが広がるためには、中小企業、小規模事業者における賃上げが何よりも重要だ」と述べ、全国の中小零細企業に賃上げを要請しました。

しかし、大企業が毎年のように賃上げを実施し、中小企業でも何割かは賃上げを実施しているにも関わらず、現在まで22カ月も連続で実質賃金がマイナスというのは、それほどまでに物価高騰の波が収まらないからなのです。それなのに、原材料費の高騰に苦しんでいる中小零細企業に賃上げを要請するなんて、モノゴトの順序が逆だと思います。

そして、何よりもシャレにならないのが、岸田首相が全国の中小零細企業に賃上げを要請したのと同じ3月22日に、内閣府が発表した「社会意識に関する世論調査」の結果です。今の社会で不満や不安を感じている点を複数回答で尋ねた設問では、「経済的なゆとりと見通しが持てない」との回答が最多で、昨年同月の調査より0.7ポイントアップの63.2%となったのです。これは、2008年から始めた同様の調査で、過去最多の数字だそうです。

そして、ワースト2位の「子育てしにくい」は28.6%、3位の「若者が社会での自立を目指しにくい」は28.2%、4位の「女性が社会での活躍を目指しにくい」は26.2%、5位の「働きやすい環境が整っていない」は25.8%と、2位以下は横並びでした。こうして2位以下と比較してみると、ワースト1位の「経済的なゆとりと見通しが持てない」の63.2%が、いかに突出しているかが分かると思います。

また、今の日本で悪い方向へ向かっていると思う点を複数回答で尋ねた設問では、「物価」が69.4%でワースト1位でした。そして、2位の「国の財政」が58.4%、3位の「景気」が58.1%、4位の「経済力」が46.7%と、こちらは前の設問でワースト1位だった「経済的なゆとりと見通しが持てない」という回答を補填するような回答が上位を占めました。

この設問で「物価」がワースト1位となったのは2年連続で、内閣府の担当者は「物価高が続き、経済的なゆとりがないと感じている人が減少していないことが背景にあると思う」と述べています。そして、こうした世論調査の結果を内閣府が発表した当日に、岸田首相は、物価高に苦しむ全国の中小零細企業に賃上げを要請したのです。

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