2018年、最高裁判決が引き金に
一方、ニュージャージー州は、東海岸にあるアトランティックシティーを有し、スポーツ賭博を合法化するための法整備を進めていたが、PASPAの制定前に間に合わせることができない。
その後、州の財政問題や非合法賭博が問題視される中で、多くの人々がスポーツ賭博の合法化を望み、これが住民投票を経て州憲法が修正されるきっかけとなり、2012年にはスポーツ賭博を許可する法律が制定。
これに対して全米大学体育協会(NCAA)やプロスポーツ団体などがPASPA違反を理由に訴訟を起こし、初審と二審では彼らが勝利する。しかし州が上告し、この問題は最終的に2018年5月、最高裁判所の判断に委ねられた。
最高裁は、憲法修正第10条に基づき、「憲法が連邦に委ねた権限や州に委ねることを禁止した権限を除き、各州や国民が権限を持っている」として州の自治権を尊重。最高裁は修正10条に基づき、連邦政府がスポーツ賭博に関して州を規制するのは「違憲だ」と判断。
これにより、州による賭博解禁に道を開いた。この最高裁の判決時、ニュージャージー州以外にも5州がスポーツ賭博を合法化する法律を既に制定しており、さらにその判決を受けて十数州で同様の法律が提案。
その後、多くの州が税収増加を目指して賭博を解禁し、アメリカ全土の38の州でスポーツ賭博が合法化された(*2)。
「スポーツベッディング」日本にも波及
アメリカでは現在、首都ワシントンDCを含む38の州でスポーツ賭博が合法。米メディアによると、スポーツ賭博が合法かどうかは、賭けが行われる州によって決まる。
合法の州であれば、年齢制限を満たす人はどこに住んでいても賭けることができる。
一方、オンライン賭博の場合は、利用者の位置情報がGPSを通じて確認され、合法の州内でのみアプリで賭けることが可能。
水原氏の場合、スポーツ賭博が認められていないカリフォルニア州で、違法なブックメーカー(賭け屋)を利用していたことが問題に。
合法の州で、自分が関わる野球以外のスポーツに賭けていたなら、問題視されなかったとも(*3)。
スポーツ賭博は「スポーツベッティング」ともいい、日本にも波及。経済産業省は2021年に、地域スポーツの振興資金としてスポーツベッティングを検討するための研究会を開催した。
2017年、サッカーJリーグの放映権はスカパーからDAZNへと移行したが、DAZNの運営会社パフォームは、そもそも「スポーツベッティング」の運営者に対し、動画配信を行うことで急成長を成し遂げた企業だ(*4)。
■引用・参考文献
(*1)秋山信一「スポーツ賭博、大半の州で合法 最高裁の判決を引き金に続々解禁」毎日新聞 2024年3月21日
(*2)秋山信一 2024年3月21日
(*3)浅井俊典、鈴木龍司「大谷翔平選手も巻き込まれた、アメリカのスポーツ賭博の実態は 券売所で聞くと…若い男性ほどハマるワケ」東京新聞 2024年3月23日
(*4)「Jリーグの放映権について|DAZN一強の理由とは?」HALF TIME 2020年1月1日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年3月30日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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image by: Embassy of the United States in Japan, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で, Moto “Club4AG” Miwa from USA, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons









