◆アルコールと血糖低下作用
アルコールには、血糖低下作用があります。しかし、個人差が大きいので、(A)gのアルコールが血糖値を(B)mg、低下させるというように一律にはいきません。
エネルギー源としては、[アルコール→糖質→脂質→タンパク質]の順で利用されます。焼酎、ウィスキーなど蒸留酒には糖質は含まれていないので、血糖は全く上昇しません。
しかし、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて、優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
血中アルコール濃度が上昇している間は、糖新生はブロックされるので、個人差が大きいと思いますが、酒を飲んでいる最中は、血糖値が下がる人もいると思います。
また、一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。アルコールの血糖低下作用については個人差が大きいので、ご注意ください。
なお、SU剤内服中の糖尿人やインスリン注射中の糖尿人は、過度のアルコール摂取により糖新生が阻害されると低血糖になりやすいので要注意です。正常人でも、空きっ腹で大量のアルコールを摂取すれば、低血糖になる可能性もあります。
◆アルコールの適量
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
・ビール(5%)なら600ml
・ワイン(15%)なら200ml
・ウイスキー(43%)なら70ml
・焼酎(25%)なら120ml
・糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。
◆アルコールのリスク
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」のリスクとなるので要注意です。
それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。
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