習近平とプーチンが望む「イスラエル―イラン全面戦争」への米の参戦
今まで何度もお話ししましたが、イランは昨年3月時点で、ウラン濃縮度を83%まで上げていました。さらに、昨年9月、「IAEAの査察を拒否する」と宣言した。なぜ?おそらく、ウラン濃縮度が90%を超え、核兵器を作れる状況になったのでしょう。イランの手下のハマスが、イスラエルを奇襲したのは、その1か月後の昨年10月です。
イスラエルは、日本でいえば四国ぐらいの大きさしかありません(イランの領土は、日本の4.4倍!)。イランは、イスラエルを国家承認しておらず、反イスラエルが国是です。そんな国が一発でも核兵器を保有することは、四国並の領土のイスラエルにとっては、まさに「国の存亡をかけた危機」になります。だから、なんとしても、イランの核施設を破壊したいところでしょう。
こういう現状から見ると、イスラエルとしては、「なんとかしてアメリカも巻き込んで、イランの核施設を破壊したい」という流れだろうと思います。そして、北朝鮮の核保有を許してしまったアメリカも、イランの核計画をつぶしてしまいたいはずです。
ところが、「ウクライナ―ロシア戦争」「イスラエル―ハマス(黒幕イラン戦争)」を戦うアメリカは、「中国、北朝鮮の動向」も考える必要があります。
イスラエル―イランの全面戦争が起こり、アメリカがイスラエル側について参戦すれば、まずウクライナを支援する余裕がなくなり、プーチン・ロシアが大いに喜びます。そして、習近平は「ライバルアメリカは、勝手にロシア、イランと戦って弱体化していく!」と、笑いが止まらなくなるでしょう。人民解放軍幹部は、「アメリカがロシア、イランと戦っている今が、台湾に侵攻する千載一遇のチャンスですぞ!」と進言することでしょう。
というわけで、現在の状況をまとめてみましょう。
- イランは、昨年3月時点でウラン濃縮度を83%まで上げていた。昨年9月に、IAEAの査察を拒否した。現状は、核兵器保有一歩手前(あるいはすでに保有したが実験前)と予想される
- イスラエルの存在を認めないイランが核兵器を保有することは、日本の四国程度の領土しかなイスラエルには、まさに死活問題
- だからイスラエルは、イランの核施設を破壊しなければならない
- 今回の攻撃は、大規模攻撃前の「偵察攻撃」だった可能性がある
- 全面戦争になるとイスラエル一国では、地域大国イランに勝てない可能性が高い。だからイスラエルは、アメリカを引き入れたい
- 北朝鮮の核保有阻止に失敗したアメリカも、イランの核保有を阻止したい。しかし、同時にアメリカは「4正面作戦」(=ウクライナ、中東、台湾、朝鮮半島の戦争)が起こるのを望まない。それで、どう動けばいいか、協議が行われている
現状は、そんな感じなのでしょう。
あなたがネタニヤフ首相だったら、バイデン大統領だったら、どう動きますか?想像してみると、「実に悩ましい現状」であることが理解できるでしょう。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年4月20日号より一部抜粋)
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