手術への不安と痛みは「脳への電気刺激」で軽くなるという研究結果

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うつや不安の軽減、運動機能の回復のために脳への物理的刺激は効果があるのか、これについては今まで長年にわたって議論が交わされてきました。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、手術前に電気刺激を行い、不安に効果があるのかどうかを確かめた実験を紹介しています。

手術の不安に対する電気刺激(tDCS)の効果

◎要約:『手術前の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、不安等の精神症状を軽減する可能性がある』

うつ・不安の軽減や運動機能の回復等のため、脳への物理的刺激を行う方法の一つとして、頭蓋の外から微量の電流を通電する経頭蓋直流電気刺激(以下“電気刺激”と表記)の効果が議論されてきました。

今回は、手術の前に電気刺激を行い、不安などに対する効果を調べた研究をご紹介します。

Transcranial Direct Current Stimulation for Anxiety During Laparoscopic Colorectal Cancer Surgery

A Randomized Clinical Trial

大腸がん手術に伴う不安に対する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)

大腸がんに対する腹腔鏡手術を受ける196人(平均63.5歳、63.3%が男性)が対象となりました。

手術の前日と当日に電気刺激を行うグループと偽刺激を行うグループに分けて、不安などの指標を比較しました。

結果として、以下の内容が示されました。

・電気刺激を行ったグループの方が、周術期の不安の出現が少なくなっていました(電気刺激38.8% vs 偽刺激70.4%)。

・電気刺激を行ったグループの方が、手術後のせん妄(精神症状を伴う意識障害)の出現が少なくなっていました(電気刺激8.2% vs 偽刺激25.5%)。

・その他、痛みの程度、睡眠の質、手術後の疲弊等においても、電気刺激を行った場合の方が有利な結果となっていました。

経頭蓋直流電気刺激(tDCS)については、効果の有無に関してまだ議論があり、どのような場合に効果があるのか、適応について今後の検証が期待される内容でした。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 もりさわメンタルクリニック 【発行周期】 日刊

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