都民がやっと気づいた小池百合子の賞味期限。儚くも消えた「日本初の女性総理」の夢、都知事の椅子にすがるしかない小池劇場に響く四面楚歌

 

小池氏に大きな「借り」を作った萩生田氏の動き

そこで、東京15区の補選への自身の出馬を断念した小池氏は、自分の代わりに隠しカードとして用意していた乙武洋匡氏を出馬させることにしたのです。小池氏が出馬した場合、「自分の野望のために都政を丸投げした」という批判は免れられないため、小池氏は二階氏の会見を待たずして、3月初頭に乙武氏と直接面会して、出馬を打診していたのです。

しかし、乙武氏は2020年5月の参院選に東京選挙区から無所属で出馬し、改選数6議席に対して9位に惨敗しており、すでに痛い目を見ています。その乙武氏が出馬の打診に乗ったのですから、小池氏はそうとう良い条件、たとえば「自公の推薦」などを提示したと思われます。そして、二階氏の会見を受けた小池氏は、3月28日、都民ファーストの会が国政進出を目指して立ち上げた「ファーストの会」の共同代表に乙武氏を就任させ、その流れで乙武氏の東京15区の補選への出馬も発表しました。

しかし、フタを開けてみると、乙武氏は「無所属」での出馬だと言うのです。小池氏のイメージカラーである緑色のポロシャツを着て、緑色のキャップをかぶり、白地に緑色の文字で「乙武ひろただ」と書かれたタスキを掛けた乙武氏の隣りには、いつもの緑色のブルゾンと緑色のスカーフを巻いた小池百合子都知事が立っているのに、「無所属」とはこれいかに?

さて、時計の針を少し戻し、萩生田光一氏のお膝元で行なわれた今年1月の八王子市長選は、萩生田氏の恥も外聞もない裏金問題で逆風が巻き起こり、当初は自公が推薦する初宿(しやけ)和夫氏が劣勢で、野党系の候補がリードしていました。しかし、ここで負けてしまっては萩生田氏の立場がさらにまずくなります。そこで萩生田氏がすがりついたのが、自民党とは距離があると有権者から思われている小池百合子氏でした。

萩生田氏の要請で小池氏が応援演説に入ると、八王子の風向きが大きく変わりました。小池氏の肉声を録音した自動音声の電話作戦まで繰り広げた結果、なんと終始劣勢だった初宿和夫氏が逆転勝利したのです。小池氏に大きな「借り」ができた萩生田氏は、選挙後に招待した食事の席で、小池氏に「国政に復帰して自民党に戻るなら後押しする準備はできています」と述べたと報じられました。

その後、萩生田氏は「(裏金問題で)俺を切り捨てるのは構わんが、俺を切ったら小池都知事とのパイプがなくなるぞ」と言って、党内で幅を利かせるようになったとも報じられました。そんな萩生田氏ですが、八王子市長選のお礼として行なおうとしたのが、柿沢未途議員の辞職に伴う東京15区の補選を利用して、水面下で小池氏が目論んでいる国政への復帰を手助けするというシナリオでした。現職の都知事が出馬して自公が推薦すれば、寝ていても当選するからです。

しかし、前出の理由で小池氏は出馬を見送ることになり、東京15区の補選は「小池氏が推す候補を自公が推薦する」という段取りに変更されました。すると、小池氏は事前に萩生田氏に連絡せず、自分だけで乙武氏の出馬を決めてしまったのです。小池氏が萩生田氏に「乙武氏で行く」と連絡したのは、発表の当日の3月28日でした。

萩生田氏は慌てて推薦の方向で党内調整しましたが、ここで「待った!」を掛けたのが、乙武氏の5回にも及ぶ過去の不倫問題に嫌悪感を示した創価学会の女性部でした。これによって公明党の推薦は得られなくなり、その流れから自民党も推薦するかしないか考え始めたのです。そして、このスッタモンダをマイナス要因だと捉えた乙武氏は、自ら「自分が所属するファーストの会以外に推薦願は出さない」と明言し、改めて「無所属」をアピールしました。

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