5月20日、米マイクロソフト社は米クアルコムの「Snapdragon X Plus/Elite」を搭載し、「Copilot」などのAIを動かすのに適した「Copilot+ PC」を発売すると発表。主だったPCメーカーも相次いで「Copilot+ PC」対応の新製品を発表し話題となっています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、Adobeがソフトウェアを提供すると発表したことに注目。購入に前向きになったものの、アップルと比較すると「欲しい」と思ったその気持ちを萎えさせる点があると指摘しています。
マイクロソフトが「Copilot+ PC」を発表──苦節7年。クアルコムはパソコン市場で飛躍できるか
マイクロソフトは5月20日(現地時間)、新しいカテゴリーのWindows PCとなる「Copilot+ PC」を発表した。クアルコム「Snapdragon」を搭載し、40 TOPSを実現。Recall機能により、パソコンで見たものを遡れたり、ライブで翻訳し、字幕を見せてくれる。まさにオンデバイスAIとしての進化形を見せつけた格好だ。
今回、マイクロソフト「Surface」だけでなく、Acer、ASUS、デル、HP、レノボ、サムスンもCopilot+ PC対応の新製品を発表。アップル「MacBook Air」への対抗心をむき出しにしている感があった。
思い起こせば、マイクロソフトとクアルコムの関係は2017年頃まで遡る。当時から「WindowsをSnapdragonで動かす」として、対応製品を出してきたが、泣かず飛ばずで終わってきた。ARMで動くソフトが少なく、既存のパソコンと置き換えるにはかなり現実的とはいえなかったのだ。
今回は「生成AI」というブームに乗り、クラウドだけでなく、オンデバイスでの処理が重要になってくるという流れから、NPUが強い、クアルコム「Snapdragon Elite」が採用され、一気にラインナップが増えていったという感じだ。Snapdragonの強みである省電力により、本体サイズも薄くできることからMacBook Air対抗にふさわしいということだろう。
これまでArm版のWindowsにはやる気がなかったっぽいAdobeもPhotoshop、Lightroom、Expressといった主要アプリケーションがすでにCopilot+ PCに提供され、IllustratorやPremiere Proなども今夏には提供開始するとのこと。ノートパソコンメーカーだけでなく、ソフトウェア会社も、ようやくSnapdragonになびいてくれたということだろう。
個人的にも「買って試してみようかな」と、いろいろと記事を漁ってみたが、残念ながら、5Gモデムが載ったモデルは今年の秋以降にしか発売されないという。せっかく、購入意欲が高まってきたのに、なんだか冷や水を浴びせられた気分だ。
この点、やはりアップルは発表して、翌週末には店頭に並べてしまうスピード感がスゴイ。一方、Windows勢はどうしても水平分業のせいか、発表から発売まで時間が空いてしまい、どうしてもテンションが下がってしまう。
Androidスマートフォンにも言えることだが、やはり発表されて興奮状態にあるなか、すぐに予約ボタンを押して、購入したくてもできない状態はなんとも歯がゆい。アップルのように発表して翌週には発売までは行かないまでも、発表して、Wi-Fi版と同じタイミングで5G版も用意するぐらいのことは、なんとかならないものだろうか。
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