尹大統領はアメリカとの核の共有にも積極的だ。象徴的な動きは2023年4月の尹大統領の訪米である。ジョセフ・バイデン大統領との首脳会談後に出された「ワシントン宣言」には、〈拡大抑止に関する協議体「核協議グループ(NCG)」の新設のほか、核兵器を搭載できる戦略原子力潜水艦など米戦略資産の朝鮮半島展開の頻度を増やすといった具体的な拡大抑止の実行策が盛り込まれた〉。韓国『聯合ニュース』は4月27日付で、「拡大抑止に特化した韓米ワシントン宣言 『事実上の核共有』=韓国大統領室」というタイトルで報じている。
もっとも韓国で高まった「核共有」の議論は、最終的には尹政権の前のめり過ぎる反応だったと急速にトーンダウンするのだが、今回はむしろ韓国側ではなく、アメリカサイドから強いラブコールが韓国に向けられた形だ。
ウィッカーが「アメリカの戦術核の朝鮮半島への再配備」を主張する動機は、「北朝鮮に対する核・ミサイル問題で、いますぐ可能な外交的解決策が見当たらない」(KBS)ためだと説明された。しかし、本音はむしろロシアや中国などの脅威に対応するためだと考えられる。ウィッカーは、「NATO(北大西洋条約機構)のような核の責任分担の合意に、韓国や日本、オーストラリアが参加する意思があるかどうか、それを評価する対話を始めるべきだ」とさえ言っているのだ。
アメリカの政界ではいま、中国やロシア、イランが結束してアメリカ中心の国際秩序に挑戦しているとの考え方が定着している。そして、その対抗軸として日本、韓国、オーストラリアを取り込み、アジア版NATOを完成させたいと急いでいるとされる。ウィッカーはそれを「核の共有」まで一気に進めようというのだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年6月2日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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