朝鮮半島への“核”再配備論がアメリカ発で再燃し始めた「真の理由」

Democratic candidate Joe Biden is sharp in the foreground, while Republican candidate Donald Trump is blurred in the background, USA, December 16, 2024
 

尹大統領はアメリカとの核の共有にも積極的だ。象徴的な動きは2023年4月の尹大統領の訪米である。ジョセフ・バイデン大統領との首脳会談後に出された「ワシントン宣言」には、〈拡大抑止に関する協議体「核協議グループ(NCG)」の新設のほか、核兵器を搭載できる戦略原子力潜水艦など米戦略資産の朝鮮半島展開の頻度を増やすといった具体的な拡大抑止の実行策が盛り込まれた〉。韓国『聯合ニュース』は4月27日付で、「拡大抑止に特化した韓米ワシントン宣言 『事実上の核共有』=韓国大統領室」というタイトルで報じている。

もっとも韓国で高まった「核共有」の議論は、最終的には尹政権の前のめり過ぎる反応だったと急速にトーンダウンするのだが、今回はむしろ韓国側ではなく、アメリカサイドから強いラブコールが韓国に向けられた形だ。

ウィッカーが「アメリカの戦術核の朝鮮半島への再配備」を主張する動機は、「北朝鮮に対する核・ミサイル問題で、いますぐ可能な外交的解決策が見当たらない」(KBS)ためだと説明された。しかし、本音はむしろロシアや中国などの脅威に対応するためだと考えられる。ウィッカーは、「NATO(北大西洋条約機構)のような核の責任分担の合意に、韓国や日本、オーストラリアが参加する意思があるかどうか、それを評価する対話を始めるべきだ」とさえ言っているのだ。

アメリカの政界ではいま、中国やロシア、イランが結束してアメリカ中心の国際秩序に挑戦しているとの考え方が定着している。そして、その対抗軸として日本、韓国、オーストラリアを取り込み、アジア版NATOを完成させたいと急いでいるとされる。ウィッカーはそれを「核の共有」まで一気に進めようというのだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年6月2日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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