“報じないこと”でジャニー喜多川に加担。自浄能力を無くし隠蔽体質の強化で性被害者の増加に手を貸した大マスコミの重罪

 

芸能・メディア関係者の半数が「セクハラや性暴力を経験」の異常

それはジャニーズ事務所のだけではない。

荻上チキさんが主宰する社会調査支援機構チキラボが実施した「芸能・報道分野における ハラスメントや不当な営業行為、商行為についての調査」(調査機関2023年11月7日─2024年1月19日、グーグル・フォームによるオンライン調査)では、芸能や報道・メディア分野に仕事として携わる人、275名のうち、「セクハラや性暴力に関する経験」に関して、51.4%が「被害を受けた経験」があり、77.3%が「事例を聞いた経験」があると回答した。

半数以上が「ある」ことを認識する実態、それに沈黙する商社会、性被害が作り出されるその慣行は異常だ。

同調査では、対象の業界において「『圧力・忖度』『バーター』『過剰接待』『(他事務所への配慮などに基づく)出演拒否』『形ばかりのオーディション』といった、不透明な商慣行が横行」「『悪質なハラスメント』や『性暴力』が多数存在しながらも、相談につながれず、対処されず、覆い隠されたケースが多く存在」と指摘した。

シンポジウムで荻上さんは、「(各社の調査は)踏み込まれていない。『これまでは報じませんでした、これからを報じます』だけ」だとし、メディア業界の横断的な調査の必要性を論じた。

旧ジャニーズ事務所に限っては、国連人権理事会の作業部会でも「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担した」と報告している。

シンポジウムではさまざまな角度で検討しながらも、「業界の商慣行」としての改善に向けては、具体策はない模様だ。

ジャニーズ事務所は事実上解体したが、商慣行が残るのであれば、メディア業界では、あらたな性被害が生み出される可能性はまだまだ残っているのだと考えなければならない。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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