2023年になりようやく国内メディアが報道を開始し、日本中を大きく揺るがすこととなったジャニー喜多川氏による性加害問題。これを受けジャニーズ事務所は事実上解体となりましたが、芸能界からセクハラや性暴力が一掃される日は遠いようです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さんが、先日参加したという性暴力とメディアの関係を取り上げたシンポジウムの模様を紹介。そこで改めて浮き彫りになった「芸能界の商習慣」の異常さを指摘しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ジャニーズ問題で傍観したメディアと残る商慣行
遅きに失した対応。ジャニーズ問題に沈黙続けたメディアの罪と未だ残る芸能界の商習慣
日本メディア学会の春季大会でのシンポジウム「性暴力とメディア報道――ジャニー喜多川による性加害問題を端緒として――」が今月行われた。
会場は満席の盛況ぶりで「メディア研究者」らの関心の高さがうかがえたものの、この問題をどのように向き合えばよいのか、明確な切り口は見いだせてはいない。
1970年代から話題になっていたジャニー喜多川氏による性加害が世間で知られるようになったのは、2023年3月18日に英国BBCによるドキュメンタリー番組「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル(“Predator:The Secret Scandal of J-Pop)がきっかけだ。
半世紀もの間、放置され、その間被害者を出し続けたマスメディアの責任は大きい。
シンポジウムでは、問題の実態とその責任を学術的に多角的に捉えようとの趣旨で、週刊文春の元編集長からの事の推移や、英国での同様の事件での対応、ジャニー喜多川氏と米国の関係性からの考察が提示された。
どことなく、被害者が不在の考察にも見えるが、これらの切り口から迫る真実に深い反省が喚起されるはずだと信じたい。
登壇したのは、話題提供者として、加藤晃彦・前週刊文春編集長、NHK 放送文化研究所の税所玲子さん、学習院大学の周東美材さん。
討論者が林香里・東京大学教授と評論家の荻上チキさん。
週刊文春が問題を初めて報じたのは1999年で、ジャニーズ事務所は名誉棄損だとして週刊文春を訴えた。
2003年に東京高裁でジャニー喜多川氏の性加害を認める判決がされ、2004年に最高裁で判決が確定。
しかし、新聞・テレビは「ほとんど報じなかった」(加藤氏)。
前述のBBCドキュメンタリー放映後も沈黙していた新聞・テレビだが、ジャニー喜多川氏が死去し、被害者自身が記者会見したところから一般メディアが報じ始めた。
この遅きに失した対応。
外部専門家の再発防止チームが検証した調査報告書は「マスメディアからの批判を受けることがないことから、当該性加害の実態を調査することをはじめとして自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない」とメディアの責任を追及した。
そして結果として「被害が拡大し、さらに多くの被害者を出す事となった」と断じた。
ジャニーズ事務所における性被害者を増やしていたことに、マスメディアは「報じないこと」で加担していた。
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芸能・メディア関係者の半数が「セクハラや性暴力を経験」の異常